住宅などに使われる電気関係の設備素材、電気設備資材、給排水設備およびガス設備資材の製造販売を行っている未来工業は、それぞれの製品ジャンルで非常に高いシェアを誇る日本の「強い」企業である。

 その強さの源泉は、「ホウ・レン・ソウ」をしない、「社内のルール」はできるだけ作らない、という大企業ではおよそあり得ない経営によって生み出されていることを前回述べた。実はそれ以外にもユニークな経営手法が数多く実践されている。

社内の問題は社員が一番理解している

 未来工業では一律の社員教育を行わない。新入社員は、総務から2日間のオリエンテーションを受けるだけで、すぐに現場に放り込まれ、その後、退職まで一切の強制教育はないのだ。

 全員に強制するのではなく、自分でいろいろな資格の勉強をしたいという社員をサポートする方法を取っている。提携している大学のカリキュラムを紹介し、資格を取得した人の費用は会社がすべて持つ。

 そして、資格手当を毎月支払っている。この資格手当は、あらかじめ難易度を基に資格ごとに設定されており、実務に関係のない資格を取得した時であっても支払われる。実際に、社会保険労務士の資格を取得している営業担当の社員もいる。

 このような支援を行っている理由は2つある。1つは社員の意識の高揚だ。「どんなことでもいい。自分の門戸をとにかく広げなさい」。そのような考えで行っているのだそうだ。

 もう1つは、社内に専門家がいるので、何でも自前で解決できるからだという。例えば社内の服務規定を変更しようとした時に、プロに頼むよりも安く済み、しかも社内の実情が分かっている人間に任せることができるのだ。

 会社に適したものは、コンサルタントに丸投げしてしまうよりも、内情を知っている社員が作るのが一番良いのだという。