それでもやはり、社員の中には強制教育を行ってほしいという者もいる。しかし、瀧川克弘社長はきっぱりと拒否する。「自分の能力を引き出すためには、人から言われてやるよりも、自分から自主的に取り組んだ方がいいのです」と言うのだ。
また、資格取得の支援を続けていくと、ほかの社員が取った資格を自分も取りたくなる社員が出てくるので、未来工業ではこれまで強制教育の必要を感じたことがないのだという。
本人がいたいと思える会社づくりを
それほど様々な資格を取得させているならば、「部署を移りたい」「転職をしたい」という人たちが出てくる可能性もあるが、未来工業の場合、今までそのような社員は出てこなかったという。しかし、そういうことがあってもいいというのが未来工業の考えだ。
優秀な人材を社会に輩出し、社会的に貢献をしたことになる、というのがその理由。また、転職を考える者には、辞めろとも辞めるなとも言わない。ここでも “自分で考える” ことを大切にしているからだ。
瀧川社長は、「会社に対する忠誠心」という名目で、押さえつけて「何がなんでも言うことを聞け」というのは間違っているという。「本人がいたいと思える会社づくり」をすることが大切なのであって、強制をしても仕方がない。自分で考えて、この会社にいたいと思える会社づくりをする方が、大事なのだと語る。
小さな倹約 大きな浪費
未来工業には社用の車が1台もない。送迎の運転士もいない。「要らないものは使わない」「要るものは使う」の姿勢を徹底しており、350人が働く本社にはコピー機が1台しかなく、廊下も暗い。
節約に関しても力を入れている瀧川社長だが、「ケチ」と「しみったれ」は違うと言う。「ケチ」は “これは本当に有効か” という点を考えなければできないという。
「考えずに漠然としていると、流されてしまって、結局無駄な費用を使ってしまうのです」。瀧川社長は「小さな倹約」と「大きな浪費」という2つの言葉を使い、未来工業の状況を説明した。
無駄に使ってしまった電気や水は、もう戻ってこない。このようなものを倹約することが「小さな倹約」である。しかし、すべてのものを倹約していたのでは会社としては立ち行かなくなってくる。
設備投資など、使うべきところではしっかりと使わなければいけない。それが「大きな浪費」である。