そもそも「品質」とは何だろうか?
かつてトヨタの心あるエンジニアが私にこう語った。「トヨタは『製造品質』では世界一になったと思います。しかし『設計品質』においてはとても世界一になったとは言えません。むしろ他にもっと優れたメーカーがいくつもあります」
この言葉を、私は何度となく思い出し、噛みしめている。
自動車の品質で最も分かりやすいのは、製品として顧客の手に渡った時点で不具合が少ないこと。これが「製造品質」。
しかし、それだけが自動車の品質ではない。まず工業製品として、機械として、あるいは空間設計など自動車の基本機能において、より優れたものを生み出すべく、様々な角度から見て、考えて、知恵を絞って、創造する。そこに現れるのが「設計品質」。
さらに、それを現実に走らせ、使った時に、人間が体験・体感する移動空間としての資質こそ、自動車にとって根源的な「品質」なのであって、私はそれを「動質(Quality of Dynamics)」と呼んでいる。これら全てが一体となって、自動車の「品質」を形づくる。
日本のクルマづくりに広がり始めた亀裂
トヨタを核とした日本車、そして日本の自動車産業は、この「製造品質」を得意技にしてきたわけだが、自動車産業、とりわけ部品産業のグローバル化によってノウハウや設計基準が拡散し、日本のリードはみるみる縮小してきた。
その一方で、「効率的な経営」などの表層だけを追いかける動きによって日本のクルマづくりそのものの中に欠陥や弱点が生み出され、しかも、それらを看過したままバブルに浮かれて製品の本質を軽視し、コスト切り詰めばかりを追いかけてきた十余年の間に、亀裂は危険な大きさにまで広がりつつあるのだ。
その認識こそ、このコラムを始めた理由の1つである。
今回は、トヨタのアクセルペダル関連のリコールについて、その具体的な内容を把握すべく調べて考え、それに沿って話を進めてきた。
しかし、問題はここから先。日本のクルマづくりそのものの仕組みや足場を見直し、老化している部分、亀裂が現れている部分を認して、再構築を進めないと。
このテーマは、今後もずっと色々な視点から書いてゆくことになるだろうけれども、次回は「大量リコールを引き起こし得る、ものづくりの現況」について、もう少し掘り下げてゆくことにしたい。
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