年末・年始と日本の新聞・テレビを賑わした日本航空の再建問題も、ようやく、法的整理への道筋がついたようだ。
ナショナルキャリアである日航が日本人にとって大きな関心事であるのは当然のこと。しかし、米メディアにも太平洋の向こうの航空会社のニュースが頻繁に登場している。というのも、2008年秋にノースウエスト航空を買収して旅客輸送能力世界一に躍り出たデルタ航空と、業界2位に甘んじるアメリカン航空が、日航との関係強化を目指して激しいつば競り合いを演じているからだ。
デルタ、アメリカン両社のマスコミ対策が尋常ではない。広報担当者だけでなく、役員をニューヨークやワシントンに送り込み、米主要メディアは言うに及ばず、日系報道機関にも積極的に接触を図っている。米大手企業の広報戦術としては極めて異例だ。
もちろん、世界1位と2位の航空会社が、善意だけで日航支援に動いているわけがない。燃料費の高止まりや世界景気の回復の遅れに伴うビジネス客の落ち込みで経営は苦しい。このため、価格競争の激しい米国内路線に比べて、収益性の高い太平洋路線の共同運航などでコストを圧縮したい――。そんな思いが提携交渉に拍車を掛けているのだ。
日航の経営難=デルタの好機
国際線に関しては、世界の主要航空会社が3大航空連合に分かれ、顧客利便性の向上とシステムの共通化による効率運航を追求している。年間搭乗客数5億7000万人を誇る最大勢力「スターアライアンス」は、米3位のユナイテッド航空や独ルフトハンザ航空が中核メンバーで、日本からは全日空が参加している。
しかし、世界最大手のデルタが、仏エールフランスなどと構成する「スカイチーム」(年間搭乗客数3億8500万人)には日系航空会社はない。デルタ便を使って米国からアジアに向かう乗客の95%は日本を経由するが、日本からは別の航空連合に乗り換えられてしまうケースが多くなる。つまり、収益機会をみすみす逃しているわけだ。
折しも2009年10月、米4位コンチネンタル航空がユナイテッド航空との提携を機に、スカイチームを脱退し、スターアライアンスに移った。経営危機に陥っているとはいえ、日本からアジア各地への路線を持つ日航を取り込み、空いた穴を埋めたい――。デルタの戦略は明快だ。