名画には、名悪役あり。ヒーローが輝いて見えるのは悪役次第。米国の金融市場で、その重要な役どころをしっかりこなし続ける大物俳優はゴールドマン・サックスだ。金融危機を乗り越え、復活を果たしたゴールドマンは、劇的な収益改善で2009年通期で史上最高益を叩き出した。従業員には過去最高レベルの報酬が支払われたという。
最悪期を脱したとは言え、回復の足取りが鈍い景気に苛立ちを募らせる米国民からしてみれば、公的資金によって救われたゴールドマンが、ケタ違いの利益を謳歌していることが面白いはずがない。窮地でカネを恵んでくれた恩人を踏み台にして、巨万の富を築く成り上がりもの――といったところか。
3年前のことを蒸し返してSECがGSを提訴
ニューヨークのゴールドマン・サックス本社〔AFPBB News〕
2010年4月16日金曜日午前。週末を控えて見送りムードが強まる市場に、突然、予想外のニュースが舞い込んできた。米証券取引委員会(SEC)が、サブプライム住宅ローン関連の債務担保証券(CDO)組成と販売に関する不正行為でゴールドマン・サックスを民事提訴したのだ。
前日まで6日続伸を記録した市場は、一瞬戸惑ったように見えた。サブプライム? 一体いつの話? なぜ今? しかし、間もなく「ゴールドマンに対して当局がついに牙をむいた」という解釈が共有されると、一気に売りが膨らんだ。
訴状によると、住宅バブル崩壊が既に始まっていた2007年初め、ゴールドマンはサブプライム住宅ローンを組み込んだ「ABACUS(アバカス)」と呼ぶ金融商品を作った。商品を構成する住宅ローン担保証券(RMBS)は、金融保証保険会社がリスク審査をして選定した形を取っていた。
ところが、この商品は抜群の運用成績で知られる有名ヘッジファンドのポールソンが価値下落を見込んで、空売りを仕掛けるRMBSで構成されていたという。つまり、値下がり確実な商品を投資家に売り付けた疑いが持たれているわけだ。投資家の損失額は数十億ドルに上ったもよう。
その裏で、ゴールドマンとポールソンは、ちゃっかりアバカスの価値下落を保証する保険契約(クレジット・デフォルト・スワップ)を結び、巨額の利益を上げたとされる。
金融改革法成立のための生贄か
ゴールドマンの行為は、「不正だと言われれば、そうかもしれないグレーゾーン」(米投資会社幹部)。市場関係者の反応は総じて冷ややかだ。あるトレーダーは「問題の商品を買ったのはプロの投資家。『ちゃんと説明をしてくれなかった』と泣きつくのはルール違反で、同情の余地はない」との声も多い。
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