大学や専門学校の学生たちが、本格的なレーシングマシンを自ら企画し、設計し、製作し、その走りはもちろん、開発プロセスの内容も含めて競い合う。これが「学生フォーミュラ大会」。米国起源の規則とプロセスに則った「ものづくり競技」である。

 本大会には60以上の学校からのチームが集まるまでになった。もちろんそのレベルは様々だ。先輩たちからの流れを受け継いで、上位を争うべく体制を整えてくるチーム。逆にほとんど経験がなく、まったく手探りで「よちよち歩き」にとどまるチーム。

 人数にしても、マシン造りからしてそれなりのマンパワーが必要。それを走らせ、さらに「静的審査」への準備も整えるとなれば、多い所では数十人の陣容になり、しかもその一人ひとりがやるべきことを持つ体制になる。それに対して、最小で数人、10人以下でマシン製作の場も資金にも大学からのサポートがほとんどない、というチームまである。

 と、ここまでは前回、紹介した「学生フォーミュラ大会」の概要。本題は、ここからだ。

 チームの組織も実力も様々な彼らに、共通していることがある。

 「ものづくりは面白い、楽しい」という思いを発散する顔、顔。面白さだけでなく、難しさに直面しているからこそ表れる行動。それが、この大会の場に満ちているのだ。

隠すことなくマシンやチーム運営の情報を交換する学生たち

 マシンを整備しているチームのテントの前にふと立ち止まって「ここはどうなっているの?」と聞けば、相当に忙しい、あるいは切羽詰まっているはずなのに、必ず誰かが説明をし、自分の専門領域でない場合は、その担当者に声をかける。学生たちがお互いに他チームのマシンを見学し、情報交換をするシーンもしばしば見かけた。

今回は、各チームのマシンの走りっぷりをお目にかけよう。まずは、ついに総合優勝を手にした東京大学チーム。スクーター用の2気筒エンジン(今年はターボチャージャー装備)+CVTをドライバーの脇に配する「サイド・バイ・サイド」の特異なレイアウトを継承している

 本大会以外でも、技術やプロジェクト進行についての発表会が各所で行われている。その雰囲気も議論も「熱い」。疑問点や直面している問題をぶつけ合ったり、あるいは後発のチームから実績を積んだチームに質問が投げかけられる。その内容は、基礎的なものからノウハウに関わるところまで、幅広い。それに対して、自らの知見や経験を隠すことなく、率直な答えを返す。そのやりとりの中で「丁々発止」となることもある。そこでもお互いの意見を素直に受け止め合っているのが好ましい。

 同じような発表と討論は、例えば自動車技術会の学術講演会でも行われているけれども、会社や組織が異なる者同士、お互いの開発や研究の中身を探りつつ、手の内は見せたくない・・・か、自分の専門的知見に固執して「重箱の隅」的な論議に持ってゆくか、いずれにしても隔靴掻痒的な意見交換に終始しがちだ。率直な、そして議論が噛み合ったやりとりはむしろ例外的である(日本では・・・)。