日本航空の再建にからみ退職者の年金減額問題が焦点になっている。前原誠司国土交通相は11月24日朝の記者会見で「年金問題が解決すれば日航は再建できる」と述べたが、日航問題の根源は他にある。政府も日航経営陣も年金を隠れ蓑にしてはいないか。
苦渋の説明会
11月23日の昼下がり、日本航空が退職者向けに年金減額の説明会を開いた東京・虎ノ門の日本消防会館前は報道陣でごった返していた。
日航の2009年9月中間連結決算は1312億円の大赤字。再建は官民出資の公的機関「企業再生支援機構」に委ねられ、国は日航救済のために公的資金、つまり税金を注入する準備をしている。だが、日航が退職者に支払っている年金額は一般企業に比べて高額で、彼らの年金を税金で下支えすることに国民の合意を得るのは簡単ではない。
そこで政府は年金を強制的に減額できる特別立法を準備して次期通常国会に提出する構えを見せている。そうなればOBたちが積み立ててきた年金基金は実質的に解散を余儀なくされる。日航の経営陣は強制減額を回避して、OBたちに自主的に年金の額を減らすよう求めたい方針。年金の減額には基金加入者の3分の2以上の賛成が必要で、現状と経緯を説明することにした。
この日、2回に分けて行われた説明会には元パイロットや整備士、客室乗務員など約9000人の日航OBのうち、計1500人が集まった。穏やかに晴れわたった祝日の天気とは対照的に、みな一様に厳しい表情だ。
午後1時から開かれた第1回説明会は紛糾した。冒頭30分ほど、西松遥社長以下現経営陣が日航の厳しい現状を説明。現役は平均5割強、OBは3割強、加重平均すると4割ほど年金を減額する案を提示して理解を求めた。
その後の質疑応答で、日航元機長会会長の丸山巌氏(74)が元運航本部企画部長の荒木克巳氏ともに西松社長にあてた「速やかなる『真の再建策』の提示を!」と題した文書を読み上げた。
「いまの業績不振は積年の放漫経営の当然の帰結だ。最近4年間だけをみても運航トラブルが1200件。サービスの低下も著しく、それが旅客や貨物など顧客離れを招いている。しかも経営陣は批判をことごとく退け、本業をおろそかにして投機にうつつを抜かしてきた。ドルや燃料のヘッジ取引をはじめ、ホテル事業やリゾート開発などに巨費を投じ、その全てに失敗。損失額は明らかになっているだけでも6000億円だ。とくに燃料ヘッジでは昨年度だけで2000億円ものマイナスが出ている。