右の図は、本流トヨタ方式の全体像をイメージしていただくためのものです。
図を見てお分かりになるように、本体の「本流トヨタ方式」は、「自働化」と「ジャスト・イン・タイム(JIT)」の2本の柱に支えられています。この2本の柱は、「土台にある哲学」の上にしっかりと建立されているのです。
企業の土台にある「哲学」というのは、日本的経営の根本をなすモノです。「○○家の家訓」「□□の遺訓」「社是」といった形で、歴史ある会社には必ずあるモノと言ってよいでしょう。
トヨタで言えば、
1935年 佐吉翁の遺訓として成文化された「豊田綱領」
1938年 豊田自動車新工場移転時の喜一郎氏の「誓文」
1963年 TQC推進体制整備に向けた「基本方針」
1983年 トヨタ自工・自販が合併した新生トヨタとしての「基本方針」
1989年 国内販売200万台達成時の「基本方針」
1992年 巨大化した組織を束ねるための「基本理念」
2001年 グローバル企業としての姿勢を示した「The Toyota Way 2001」
などがあります。
皆さんの会社にも似たようなモノがあることと思います。ただし、おそらくそれらは経営哲学には違いないのですが、その時期に必要としたことを選んでまとめ、何かのイベントに際して発表されたものが多いのではないでしょうか。火山活動に例えれば噴出した溶岩のようなものです。
しかし、本当につかみ取りたい「経営哲学」は、地表に吹き出した溶岩ではなく、地底の奥深くでうごめくマグマと言うべきモノなのです。
そういう意味での「本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、今回から以下の4項目に分けて説明していきます。
【その1】 人間性尊重
【その2】 諸行無常
【その3】 共存共栄
【その4】 現地現物
これらは本流トヨタ方式を根底から理解するために大切な「ものの見方・考え方」なので、じっくり丁寧にお話ししたいと思います。
社会のありのままの人材構成を受け入れる
まず、【その1】の「人間性尊重」から見ていきましょう。
先に示した「The Toyota Way 2001」の中で、本流トヨタ方式の土台にある「人間性尊重(Respect for People)」の哲学は、「個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる」と記されています。