G8財務相会合、景気先行きに依然警戒

世界経済の安定化で、ホッと一息?(ガイトナー米財務長官、G8財務相会合で)〔AFPBB News

「世界経済には安定化の兆しがある」――。イタリア南部レッチェで開かれたG8財務相会合は、明るさを強くにじませた声明を発して閉幕した。今はなき米証券大手ベアー・スターンズによる傘下ファンドの資産凍結で、国際金融市場に動揺が走った2007年6月から丸2年。金融危機の嵐が吹きすさぶ中、G8各国は、中央銀行による大量の流動性供給と数次にわたる利下げで金融システムの崩壊を食い止め、大規模な経済対策で景気腰折れに歯止めを掛けてきた。

 政策総動員の効果に当局者自らが及第点を与えた声明は、自惚れとも言えないようだ。主要国協調の低金利政策でカネ余りに拍車が掛かり、行き場を失った資金が株式市場や商品先物市場に戻り始めている。景気底打ち期待という名の仮想エネルギーを糧に、市場のタービンは小さくきしみながらもグンと回転数を上げてきた。

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ベアー・スターンズの破綻で、一旦はあく抜け感が出たものの・・・〔AFPBB News

 2007年初めに低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題が意識されて以来、リスク投資復活の大きな波は2度、いずれも春に訪れた。

 最初は2007年4月、サブプライムローンで急成長した米住宅金融大手ニュー・センチュリー・ファイナンシャルの経営破綻がきっかけだった。破綻直後のあく抜け感から、信用不安が後退。連邦準備制度理事会(FRB)が8月から金融緩和に動いたこともあって、10月にはダウ工業株30種平均が史上最高値(1万4164.53ドル、終値ベース)を更新する活況を生み出した。

 2度目は記憶に新しい。翌2008年3月のベアー・スターンズの資金繰り破綻だ。やはり直後に市場は弛緩。半年足らず後には後追い破綻するリーマン・ブラザーズでさえ、4月早々に大規模増資を完了させている。7月には原油先物相場が1バレル=147.27ドルという取引時間中の最高値を記録。2カ月後に未曾有の金融危機が起きることを正確に予想するのは極めて困難だった。

政府が演出する危機脱出

 金融危機の大波に襲われた機関投資家たちの脳裏には「一寸先は闇」という言葉が深く刻まれているはずだ。にもかかわらず、彼らに、2009年版の「緩み」が訪れている。

 ダウは直近の底値である3月9日の6547.05ドルから3割超も大幅に上昇し、9000ドルの大台をうかがうレベル。原油相場も2008年冬に30ドル割れ目前となったが、直近では70ドルを超える水準にまで回復している。

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住宅市場は復活できるのか?〔AFPBB News

 しかし、現在の経済環境は、一昨年、昨年の春とは決定的に異なる。米国は、金融危機とそれに並行するリセッション(景気後退)を脱するため、既に史上初となる事実上のゼロ金利政策に踏み込み、金融機関だけでなく保険会社や自動車会社支援にまで公的資金が投じられた。過去最大規模の大型景気対策、住宅対策も始動している。

 政府・FRBは「大手金融機関は潰さない」と公言し、米国債貸出制度など一部では機能を果たさなくなっている過剰な流動性供給策も維持されている。総資産1000億ドル(約9兆8000億円)超の金融機関19社に実施されたストレステスト(特別検査)をめぐっては、資本不足と判定された10社の増資計画が今月、米財務省の承認を得た。

 10社は既に、普通株の新規発行や優先株の普通株転換、資産売却を進め、総額800億ドル(約7兆8000億円)規模の資金調達を難なく実現させている。金融株に手を出す投資家の動きには、我先にという焦りすら感じられ、金融機関が抱える不良資産処理の要として導入されるはずだった不良融資売却制度が棚上げされたほどだ。