がんと対抗するための最高の方策は、優れた治療を受けることはもちろんだが、それよりもむしろ早期発見が重要かもしれない。

 胃がんの5年生存率を見ると次のようになっている。このデータは、全国がんセンター協議会加盟25施設の院内がん登録のデータから算出されたもの(1997~99年)。I期では98.7%、II期では72.5%、III期は43.2%、IV期は6.2%となっている。

 I期とIV期の、この圧倒的な差!

 I期ではほぼ全員が助かっているのに、IV期では10人に1人も助かっていない。つまり、がんは、早期発見して適切な治療を行えば、恐れる病気ではないということになる。

 ところが残念ながら、体調の異変を感じた段階で病院に駆け込み検査を受けると、多くの場合は初期ではなく、かなり進行したケースが多い。だからこそ、何も異変を感じない段階でがんを発見することが重要なのだ。

 その方法は、がん検診。今、多くの自治体では、40歳を過ぎると胃がんや肺がん、大腸がんなどのがん検診を低料金で実施してくれる定期健康診断を行っている。こうした定期健診を毎年、受けること、これががんに勝つための最も大事なことなのだ。

PETの原理

 今、がん検診の中で注目を集めているものがある。PET(ペット)という検診方法である。ポジトロン・エミッション・トモグラフィーの略で、「陽電子放射断層撮影」という意味。非常に高い精度で全身のがんを一度に検査することができる優れた検査法なのだ。

 原理を説明しよう。がん細胞は、正常細胞と比較して3~8倍ものブドウ糖を消費する大食漢だ。つまり、体内でブドウ糖がほかよりも異常に多く集まっているポイントががんということになる。

 そこをどうやって探し出すか?

 ブドウ糖に、「ポジトロン核種」という放射線を放出する物質を付着させた「FDG」という薬剤を注射するのだ。血液の流れに乗って全身に運ばれたFDGは、がん細胞に大量に取り込まれ、それを専用の撮影機材で撮影すると、放射線に反応して、その部分だけが明るく光る。