ロンドンのオックスフォードストリートにあるユニクロ店舗
写真提供:©Vuk Valcic/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

 ユニクロを展開するファーストリテイリングの連結売上高が3兆円の大台を突破した(2025年8月期)。世界2位のH&Mに肉薄し、首位インディテックスの背中も見えてきた。同社の元執行役員が書いた『ユニクロの戦略』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。飛び抜けた成長を続ける同社の戦略を徹底解説する。

 ユニクロが最初の海外進出先に選んだのは、市場規模で他国に劣るイギリスだった。その背景には、同社独自の揺るぎない基本姿勢が貫かれていた。

パーパス・ドリブンと 「海外戦略」

ユニクロの戦略』(SBクリエイティブ)

■ ユニクロの海外戦略の基本思想

 柳井さんは「個性とは服にあるのでなく、人にある」という考え方を強調し、「服とは自らの個性を組み立てる部品です。自ら選んだ高品質な部品を使って、自身の魅力を表現する。余計なものをそぎ落とし、シンプルかつ上質、高い機能性、耐久性を持ち、しかも毎年その機能が高まっていく。使い捨ての服でなく、長く着られる究極の普段着。これがLifeWearの哲学です」と説明しています。これは既存のファッションブランドへのアンチテーゼでもあり、世界展開における重要な差別化ポイントになっています。

「グローバルワン・全員経営」においては、「グローバルワン」が海外戦略と直結します。世界中で実践されている取り組みを共有し、グローバル全体で底上げしていくという考え方です。たとえば、週次の部長会議で世界中の新店舗のオープン報告を集め、成功事例と失敗事例を共有することで、グローバル全体の質を高めています。

 DX戦略「情報製造小売業」では、日本で構築したデジタル基盤やサプライチェーンの改革モデルを、ヨーロッパやアメリカなど世界各地に展開しています。

 ユニクロの情報製造小売業への変革は、海外展開においても重要な役割を果たしています。情報製造小売業とは、従来のSPAをデジタル技術で進化させたビジネスモデルです。データを活用して消費者の需要を正確に予測し、必要な量だけ生産して供給するという考え方です。