ユニクロ浅草店の外観
写真提供:共同通信社 

 ユニクロを展開するファーストリテイリングの連結売上高が3兆円の大台を突破した(2025年8月期)。世界2位のH&Mに肉薄し、首位インディテックスの背中も見えてきた。同社の元執行役員が書いた『ユニクロの戦略』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。飛び抜けた成長を続ける同社の戦略を徹底解説する。

 ユニクロの「全員経営」を支えるのは、店舗スタッフが企画から発注まで担う“究極の個店経営”。地域を知り尽くしたスタッフを主役に据える徹底した「地域密着戦略」とは、どのようなものなのか。

「地域密着」で究極の普段着へ

ユニクロの戦略』(SBクリエイティブ)

■ 運動会の情報まで反映させる

「究極の個店経営」のもう一つの特徴は、地域の細かな情報まで店舗運営に反映させることです。入学式や卒業式、運動会やお祭りなどの行事の情報は、その時期に特定の商品の需要が高まる重要な情報です。

 たとえば、運動会シーズンには白いTシャツやシンプルなズボンの需要が高まりますが、従来のシステムでは、こうした地域特有のニーズに対応しきれていませんでした。運動会が春なのか秋なのか、どの月のいつの週に多いのかなどの情報を踏まえずに商品を陳列していたので、「欲しいものがない」「あってもすぐ売り切れてしまう」という状況でした。

 また、ユニクロの店舗が入居するショッピングモールなどの情報も、需給を予測するのには重要になります。ショッピングモール全体でポイントを特別に付与するキャンペーンが行われるときには、お客様が通常よりも増える傾向にあります。本部や店長がこうした情報を把握していない場合でも、地域の事情に詳しい店舗スタッフが精通していることがあります。

 このように、地域の細かな情報まで活用することで、「本当のお客様のニーズに即したもの」を提供することができるのです。お客様のニーズに即したものというのを究極で考えると、住んでいる場所ごとのニーズに行き着きます。そのニーズに本当に合ったものを提供していく、そういう店づくりをしていくことが「Life Wear」の実現にもなります。