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ユニクロを展開するファーストリテイリングの連結売上高が3兆円の大台を突破した(2025年8月期)。世界2位のH&Mに肉薄し、首位インディテックスの背中も見えてきた。同社の元執行役員が書いた『ユニクロの戦略』(宇佐美潤祐著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集。飛び抜けた成長を続ける同社の戦略を徹底解説する。
地域ごとに顧客ニーズをつかむファーストリテイリングの「グローバルワン・全員経営」。その具体的な実践法とは?
一人ひとりがお客様の声を聞く
『ユニクロの戦略』(SBクリエイティブ)
■ 本部だけで商品を作らない
ユニクロの商品開発において特徴的なのは、本部のデザイナーや企画担当者だけで商品を作るのではなく、現場の声を積極的に取り入れて作っている点です。これは、「グローバルワン・全員経営」というストラテジーが商品開発に反映された形と言えます。
このアプローチは次章で述べるDX戦略「情報製造小売業」とも深く関連しています。
従来のSPAモデルでは、本部が過去のデータに基づき消費者トレンドを分析し、それに基づいて商品を企画し、生産、流通、販売という流れで商品を提供していました。しかし、ユニクロの「情報製造小売業」では、店舗からの生の声や顧客からの直接的なフィードバックを取り入れ、それをAIで分析して商品開発に活かすという新たなアプローチを取っています。
現場からのフィードバックは、顧客が実際に欲しいと思っているものを知るうえで非常に重要です。データ分析だけでは把握しきれない微妙なニュアンスや、地域特有のニーズを捉えるためには、現場の声が欠かせません。データはあくまでもデータで、当然ですが、全てのニーズを反映しているわけではありません。取りこぼしているニーズがあります。そこを拾ってくれるのが現場の声なのです。
もちろん、必ずしも現場の声で画期的な商品が生まれたり、商品の改善につながったりするとは限りません。しかし、重要なのは現場の声に耳を傾ける姿勢です。トライアンドエラーを重ね、今よりも良いものを作ろうとする意志です。






