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完全な経営戦略論は存在しない。20世紀初頭に生まれた「原形」は、環境変化に応じて改良・派生を繰り返してきた。本稿では『経営戦略全史〔完全版〕』(三谷宏治著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。企業がいかに理論を磨き、生存競争に勝ち抜いてきたかを振り返る。
SPA(製造小売り)というビジネスモデルを磨き上げ、世界一のアパレルブランドへと駆け上がったZARA。その進化の秘密とは?
流行を先読みしない アパレルブランドZARA
『経営戦略全史〔完全版〕』(日経BP 日本経済新聞出版)
●ファッション業界の長大な産業バリューチェーンの問題点
ファッションアパレル業界はハイリスク・ハイリターンです。流行に合った商品を提供できれば大儲けできますが、外れてしまえば5割引にしたって売れません。
流行ったと思っても、街が同じ柄(がら)で溢(あふ)れたときにはもう終わりです。その後、原宿の店頭ではその柄物が9割引で叩き売られることになるでしょう。
なぜこんなにハイリスクなのでしょう?
それは、内部環境である産業バリューチェーンの時間的な長さが、外部環境である流行の変化スピードにまったく合っていないからです。
衣類の形は最後でどうにかできますが、布地の風合いや素材や色は急には変えられません。1年前にはだいたい決めてしまわないと、染料メーカーが原料を確保して染料をつくり、紡績(ぼうせき)メーカーが糸を撚(よ)って染めて、織物メーカーが織って布地にして、アパレルメーカーが企画して、縫製メーカーが切って縫って、ようやく店頭に並びます。
でも、1年前に決めた色や布地が、そのまま流行るなんてありえません。だから国際的な談合(だんごう)が行われます。それがあの、ファッションショーなのです。
シーズンの何ヶ月も前にみなで一斉に発信するわけです。「来年の春は綿のパステルカラーだよ!」と消費者に。






