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「顧客志向」によって価値創造を実現するには、経営層とマーケターとの協働が不可欠だ。一方、マーケターの役割を明確に把握している経営トップは少なく、認識のギャップが生じやすい。そこで本稿では、『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(トーマス・バルタ、パトリック・バーワイズ著/田中恵理香訳/日経クロストレンド監修/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。マーケターの役割とトップマーケターに共通する行動様式を解説する。
成功するマーケティングリーダーは、なぜ一様に「野心的なビジョン」を描くのか? 韓国LG電子の米国における挑戦を紹介する。
タイムズスクエアにロゴを
『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(日経BP)
2000年初めにサイモン・カン氏が韓国LG電子の米国市場の家電事業の責任者になったとき、彼の成功に賭けられる人はほとんどいなかっただろう。
そもそも、LGは米国で実質的な事業をほとんど展開していなかった。以前のブランド名であるラッキーゴールドスターとして、ほんの数種類の製品を販売していただけで、予算もごくわずかだった。新しくなったLGブランドはほとんど知られていなかった。
カン氏はそれまで、財務畑中心にビジネスの経験を積んできた。マーケティングに関わったことはあまりなく、ブランド構築についてほとんど知らなかった。直接関連するビジネス経験がなく、社の予算も支援も最低限とあっては、オッズが高いわけがない。
ある夜、カン氏はオフィスでの長い1日を終えてソファでくつろぎながら、夢を描いた。「タイムズスクエアのネオンサインにLGのロゴが出るのを見たい。米国で最も有名なブランドの隣に」
カン氏は、この野心的なビジョンがあったからこそ、創造性に富み、新聞の見出しになるような製品のアイデアを次々と生み出し、離れ業とも言えるマーケティングを展開できたのだ。マーケティングの代理店と協力して「インテリジェントなアイデア、うれしい発見」というコンセプトを編み出した。気の利いた製品、消費者が新しい使い道を見つけて楽しめる製品だ。
数カ月の間に、カラフルな冷蔵庫をデザインし、新たな機能を搭載した製品を開発して、販売代理店の各店舗に広告を掲げた(LGの予算内でできることは何でもやった)。バイヤーを韓国に招待して研究開発ラボを見学してもらい、経営トップと引き合わせた。







