写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ
「顧客志向」によって価値創造を実現するには、経営層とマーケターとの協働が不可欠だ。一方、マーケターの役割を明確に把握している経営トップは少なく、認識のギャップが生じやすい。そこで本稿では、『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(トーマス・バルタ、パトリック・バーワイズ著/田中恵理香訳/日経クロストレンド監修/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。マーケターの役割とトップマーケターに共通する行動様式を解説する。
組織改革を託されたパナソニック コネクトの山口有希子CMO(最高マーケティング責任者)は、いかにして同社を「伝統的な日本企業」から脱却させたか。
人を動かすにはどうすればよいか?
『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(日経BP)
パナソニックホールディングス(HD)傘下のパナソニック コネクトで山口有希子氏がCMOのポストに就いたとき、大きなチャレンジが待ち受けていた――いわゆる「JTC(Japan Traditional Company=日本の伝統的な企業)を、マーケティングのチカラで、顧客第一主義の組織に変革する、というものだ。
パナソニック コネクトは、全世界で3万人の社員を雇用するBtoB企業で、法人向けノートパソコンから、機内エンターテインメントシステムまで、多彩な製品やソリューションを扱う。
「CEOの樋口(泰行氏)が着任した約8年前、会社のカルチャーは、組織の形式を重んじる大企業病が色濃く残っていた」と山口氏は回想する。多くの日本の製造業がそうであるように、ものづくり部門と営業部門の影響力が強かった。マーケティングの役割といえば、新製品の発表資料やカタログやWebサイトの制作と思われていた。
山口氏は、日本IBMやヤフージャパン(社名は当時)に何年も勤め、リーダーとして高い評価を得ていた。マーケターとして多数の組織を渡り歩いてきた山口氏は、パナソニック一筋のプロパー社員から見ればアウトサイダーであり、伝統的なBtoB企業の風土の中で、いわば異質の存在だった。ここで長くやっていけるのか、と疑問視する人もいた。
しかし、山口氏は力強いビジョンを持っていた。「マーケティングが経営のすぐ横にいて、みんなと一緒に良い会社をつくっていく。そのために素晴らしい顧客体験を生み出すと共に、社員の体験も素晴らしいものにしていく」というものだ。社員が仕事に満足し、納得して同じ方向に向かっていかなければ、素晴らしいブランドは生み出せないし、良い会社をつくれない。







