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「顧客志向」によって価値創造を実現するには、経営層とマーケターとの協働が不可欠だ。一方、マーケターの役割を明確に把握している経営トップは少なく、認識のギャップが生じやすい。そこで本稿では、『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(トーマス・バルタ、パトリック・バーワイズ著/田中恵理香訳/日経クロストレンド監修/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。マーケターの役割とトップマーケターに共通する行動様式を解説する。

 マーケティングリーダーには、なぜ「パッション」が必要なのか。マーケターとして数々のヒット商品を生み出した日本コカ・コーラ元CMO(最高マーケティング責任者)和佐高志氏が説く「人の気持ちを鼓舞する」ための鍵とは?

顧客に関する専門性を生かして他の人を鼓舞するにはどうしたらよいか?

 P&Gジャパンでジェネラルマネジャー、日本コカ・コーラではCMOを務めた和佐高志氏は、Coca-Cola(コカ・コーラ)社として世界初のアルコールブランド「檸檬堂」を生み出すなど、30年のマーケティングキャリアで多くの実績を積み上げた。マーケティングリーダーとしての成功をつかむ上での秘訣は何だったのか。同氏の経験からひもといてみよう。

 P&Gでマーケターをしていた若い頃に、和佐氏が取り組んだ素晴らしいアイデアの一つが、日本発のスキンケアブランド「SK-Ⅱ」を世界に送り出す、というものだ。

 当初は社内で興味を示さない人も多かったが、当時の社長を説得し、米ニューヨークへ飛ぶ。欧米でのSK-Ⅱのブランドポジショニングを確立しようと、数社との競合ピッチ(プレゼンテーション)で選ばれたハイエンドブランドを扱うPRエージェンシーと契約し、ニューヨーク、フランスのパリ、英ロンドンなどのパイロット市場で大きな手ごたえを得た。

 世界の主要空港のDFS(免税店)にも店舗を展開し、欧米の先進国や中国本土でも徐々にブランドの地位を築いていくことで、SK-Ⅱは、かつての4億ドルの日本ブランドから、30億ドル規模の世界的ブランドへと成長を遂げたのだ。

 日本コカ・コーラでもさらなる挑戦が待ち受けていた。同社では、緑茶の売り上げが減少していた。経営上層部の計画は、市場の11%を占める日本コカ・コーラ内の主力緑茶ブランドに集中してリソースを配分し、それ以外は投入を削減するというものだった。