米フォードの元CEOアラン・ムラーリー氏写真提供:ロイター/共同通信イメージズ
「顧客志向」によって価値創造を実現するには、経営層とマーケターとの協働が不可欠だ。一方、マーケターの役割を明確に把握している経営トップは少なく、認識のギャップが生じやすい。そこで本稿では、『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(トーマス・バルタ、パトリック・バーワイズ著/田中恵理香訳/日経クロストレンド監修/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。マーケターの役割とトップマーケターに共通する行動様式を解説する。
「事実と数字」に基づくレビューがなぜ重要なのか。経営破綻の危機を乗り越えたフォードとオランダの塗料大手アクゾ・ノーベルの事例を紹介する。
事実という力
『世界のトップマーケターだけが知っている「12の成功法則」』(日経BP)
米フォードのCEOだったムラーリー氏をご存じだろうか。同社の業績を劇的に改善させた立役者だ。2006年に破綻寸前だった同社のトップに就いたとき、自身がビジネス・プランニング・レビュー(BPR)と呼ぶ仕組みを導入した。
知ってのとおり、ムラーリー氏はCEOだったが、その行動は、マーケティングリーダーにとっても価値ある教訓になる。
ムラーリー氏は、世界各地の各部門のリーダーが毎週集まり、財務目標と主要な取り組みの達成状況を検討するよう指示した。ここで大胆な提案をする。成功事例については一つひとつ検討することはせず、問題となっている事案に焦点を当てた。
そこにどんな意図があったのか? 問題点を取り上げることで、チームが協力して解決できるよう促すということだ。「青信号」に浮かれて前進するよりも、協力して取り組むことが大事なのだ。
透明性は高いが厳格なこのプロセスに、当然ながら当初は抵抗もあった。このやり方を気に入らない人もいたし、実際の数字を隠そうとする人も多かった。ムラーリー氏は頑強だった。参加しない者は解雇すると脅しをかけ、問題を共有し支援を求める人を皆の前で称賛した。
ムラーリー氏は「BPRが基礎なのだ。現実世界に対して、しっかりと目を開かせてくれる。チーム全体で、何が起こっているかをすっかり把握できるのだ」と振り返っている。







