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 生成AIをいかにビジネスに実装していくかが求められる一方で、その進化の速さからこの技術の未来を見通すことは難しい。では、AI活用が前提となる時代に、私たちは何を押さえておくべきなのか。米グーグルでエンジニアとして活躍後、台湾に戻りトップクラスのスタートアップ経営者となった著者が記した『AI世界を生き抜く 根本原理とルール』(セガ・チェン著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。

 AIをサービスに落とし込むには、使いやすさや親しみやすさ、そして優れたユーザー体験(UX)が欠かせない。成功企業のグーグル、アップルが大事にしている価値観とは?

「レス・イズ・モア」の原則を生かす

 ユーザーは一般的に、シンプルで清潔感のあるデザインを好む。「レス・イズ・モア」という理念は、グーグルやアップルといったテクノロジーの巨頭が創業以来、大きな労力を注いで実践してきた価値観である。

 グーグルは、創業から四半世紀超を経過したいまでも、検索機能をたった1つの入力ボックスで提供し、トップページから一切の無駄を排除したシンプルな構成を守り続けている。複雑な処理はすべてユーザーの目に見えないバックエンドで行われている。

 アップルの例もまた「レス・イズ・モア」を体現している。例えば、携帯音楽プレーヤー「iPod」を覚えている人も多いだろう。当初は物理的なボタンがついていたが、後のiPhoneの開発時、エンジニアが物理的なキーボードを提案した際、スティーブ・ジョブズ氏はそれを排除することを強く主張した。その結果、エンジニアたちはタッチパネルの採用を決断し、ソフトウエアとハードウエアの進化を駆使して問題を解決した。

 グーグルやアップルの事例からも分かるように、ミニマリズムはデザインや技術の面で困難を伴うが、極めて優れたユーザー体験を提供してくれる。そして、人とAIが協力する時代に突入したいま、ユーザーはこれまで以上に高いレベルの体験を求めている。このような状況下で「レス・イズ・モア」という原則は、AIとの協調の分野でも引き続き重要な指針となるであろう。