写真提供:ロイター/共同通信イメージズ
生成AIをいかにビジネスに実装していくかが求められる一方で、その進化の速さからこの技術の未来を見通すことは難しい。では、AI活用が前提となる時代に、私たちは何を押さえておくべきなのか。米グーグルでエンジニアとして活躍後、台湾に戻りトップクラスのスタートアップ経営者となった著者が記した『AI世界を生き抜く 根本原理とルール』(セガ・チェン著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。
生成AIの登場でアップルやグーグル、マイクロソフトなど、テクノロジー大手の戦略も変更を余儀なくされた。次の勝者はどこなのか。その勝ち筋を追う。
眠っていた巨頭が突如目覚めた
『AI世界を生き抜く 根本原理とルール』(日経BP)
ChatGPTが登場するより以前、既存のテクノロジー大手同士のバランスは非常に安定していた。
各社はそれぞれ得意分野を持ち、アマゾンはeコマース、グーグルは検索、メタはソーシャルメディア、アップルはハードウエア、マイクロソフトは企業向けソフトウエアといった形で、各自の分野で利益を上げていた。
この均衡を崩す必要性は全くなかった。そのため、各社はAI開発を進めてはいたものの、AIの進化を急速に推し進める緊急性を感じていなかったのである。
しかし、ChatGPTの登場でテクノロジー大手は完全に不意打ちを食らい、このままではいけないと危機感を抱いた。AIを基盤とする新たなビジネスモデルが自社の領域を脅かすと認識した巨頭たちは、本腰を入れて対応を始めた。眠っていた巨頭たちは一夜にして目を覚まされたのである。
テクノロジー大手は急きょ、自社の基盤モデルを早期に公開し、応戦せざるを得なくなった。それだけでなく、その動きをさらに加速させる必要にも迫られた。
2023年には、各社が巨費を投じて基盤モデルの改良競争にしのぎを削る姿が見られた。グーグルは同年2月に大規模言語モデルのLaMDA(ラムダ)をもとにした「グーグルBard」をリリースした。ちなみにLaMDAはLanguage Model for Dialogue Applicationsの略である。その後、2024年2月には名称を「グーグルGemini」に変更し、12月にはマルチモーダルのモデルとしてその新バージョンを発表した。






