写真提供:©Jimin Kim/SOPA Images via ZUMA Press Wire/Jakub Porzycki/NurPhoto/共同通信イメージズ ※POLAND OUT
生成AIをいかにビジネスに実装していくかが求められる一方で、その進化の速さからこの技術の未来を見通すことは難しい。では、AI活用が前提となる時代に、私たちは何を押さえておくべきなのか。米グーグルでエンジニアとして活躍後、台湾に戻りトップクラスのスタートアップ経営者となった著者が記した『AI世界を生き抜く 根本原理とルール』(セガ・チェン著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。
現在の医療資源や技術には限界があるが、AI活用によって個別医療は飛躍的に進化しようとしている。その主役の座を狙う世界的テクノロジー企業の現状を追う。
「AlphaFold」が開く新薬開発の未来
『AI世界を生き抜く 根本原理とルール』(日経BP)
スマートアシスタントやロボットの分野に加え、私は特に新薬開発などの分野での進展にも注目している。
AIはすでに科学研究の方法を大きく変える力を持つことを証明している。2018年、米グーグルのAI研究所、ディープマインドはタンパク質の構造予測モデル「AlphaFold(アルファフォールド)」を初めて発表し、その後もモデルの継続的な改良を行っている。
これにより、研究者は現在既知のすべての配列データを学習することでタンパク質の構造を予測できるようになった。
これまで化学界や医薬業界で大きな課題の一つとされていたのは、有用なタンパク質の折りたたみ構造を見つけ出すことだった。タンパク質は1つの物質の塊であり、折りたたまれる形状によって異なる機能を持つ。これが異なる細胞と結合することで、治療効果を発揮したり、毒性を示したりすることがある。
しかし人類はこれまで、多様なタンパク質構造を同時に想像することができず、コンピュータシミュレーションに頼るしかなかった。AIが登場する前のコンピュータシミュレーションは非常に原始的で、せいぜい3D設計を使って試行錯誤する程度のものだった。結果として、40年以上の歳月をかけてようやく20万種類ほどの探索・応用に価値のあるタンパク質構造を発見するにとどまっていた。






