中外製薬 参与 デジタルトランスフォーメーションユニット長の鈴木貴雄氏(撮影:冨田望)

 中外製薬がDXを新たな段階に進めようとしている。AIエージェントの導入と業務の刷新によって、創薬プロセスの大幅な短縮を目指す。AIエージェントの活用に際しては、DX部門がビジネスプロセス全体の再設計も手掛けられるよう、人材強化に注力していく。中外製薬はビジネスの成長にAIをどう役立てていくのか。同社参与デジタルトランスフォーメーションユニット長の鈴木貴雄氏に話を聞いた。

製薬業界はDXのチャンスにあふれている

──鈴木さんはITベンダーでシステム構築やコンサルタントなどを歴任して、2024年に中外製薬のDXユニット長に就任しました。ITやデジタルを提供する側から、ユーザー企業へ転職したのはなぜですか。

鈴木貴雄氏(以下、敬称略) 私は前職まで、延べ100以上のDXプロジェクトに関わってきました。その中にはうまくいくものもあれば、失敗に終わるものも当然ありました。全力で支援しても成果につながらないのはなぜかと、あるときから考えるようになったのです。

 その疑問を解くには、ITを利用するユーザー企業側に立たなければならないと思ったのが、キャリアチェンジのきっかけです。同時に、自らの責任で企業を変革してみたいという思いも、自分の背中を押しました。

 転職先を検討する中で、製薬業界は規制産業でもあり、相対的にデジタル化が遅れている分、伸びしろが大きく、オポチュニティー(好機)があると感じました。

 また、創薬を変革することは、最終的に医療現場で働く方々の負担を減らすことにもつながります。こうした理由から製薬企業に転職する決断をし、タイミング良く中外製薬に移籍することができました。