2024年2月、札幌市内で記者会見を行った(左から)イオンの吉田昭夫社長、ツルハの鶴羽順社長、ウエルシアの松本忠久社長(当時)。
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 ドラッグストア業界の市場規模は2024年度に10兆円を突破し、食品や調剤を軸に“生活インフラ化”が進んでいる。2025年12月にはウエルシアホールディングス(HD)とツルハHDの経営統合が予定され、売上高2.3兆円・国内シェア4分の1を占める巨大グループが誕生する見通しだ。再編が進む中で、この業態が果たす社会的役割も問われつつある。流通科学大学商学部教授の白鳥和生氏が動向を読みとく。

15年で売り上げが倍増したドラッグストア業界

 2024年度、ドラッグストア業界の市場規模は10兆307億円となり、ついに大台を突破した。伸び率は前年に比べて9.0%と高く、少子高齢化や節約志向に覆われた国内消費環境を考えれば異例の数字だ。

 この四半世紀で百貨店の売上規模は大幅に減少し、総合スーパーは競争激化による厳しい経営環境が続いている。その中でドラッグストアは2008年度に5兆円を超え、わずか15年余りで倍増。いまやコンビニや食品スーパーに並ぶ国民的業態へと変貌した。

 成長をけん引したのは「食品」と「調剤」という2つの柱だ。そして2025年12月に予定されているウエルシアホールディングス(HD)とツルハHDの統合は、売上高が合算で2.3兆円を超える巨大企業を誕生させ、この業態が生活者と社会に果たす役割を根本から問い直す契機になる。

 ドラッグストアにおける2024年度の食品売上は約2兆8300億円(日本チェーンドラッグストア協会調べ)で、前年に比べて13.2%増加した。一方、経済産業省『商業動態統計』では約2兆9400億円と推計されており、集計方法の違いはあるが、いずれも“3兆円目前”に迫る規模へと拡大。市場全体の3割近くを占めるまでになった。

 ドラッグストアは粗利率の低い食品を積極的に取り込み、来店頻度を高める戦略を選んだ。冷凍食品や日配品を安く提供することで「毎日の買い物先」としての地位を確立し、そのついでに化粧品やサプリメントといった高粗利商品の購入を促す。