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徳川家康はなぜ260年もの太平の世を築けたのか。

 従来とは大きく異なる競争環境で組織が生き残るためには、周囲の変化のスピードを上回る速さで自ら変革を成し遂げられる「自走式」になる必要がある。そして、この自走式組織へと変化を促すために求められているのが、「共感型リーダー」だ。本連載では、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄氏による『共感型リーダー まわりが自然と動く、何歳からでも身につく思考法』(岩田松雄著/KADOKAWA)から、内容の一部を抜粋・再編集し、組織を自走させるためのリーダーシップについて紹介する。

 今回は、リーダーシップ理論の歴史を振り返り、今の時代にふさわしいリーダーシップのスタイルを探る。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年6月11日)※内容は掲載当時のもの

リーダーのスタイルは 状況で決まる

■ リーダーシップは生まれつきではない

 リーダーシップを小さい頃から発揮している人は確かにいます。幼稚園でも、保育士や周りを仕切っている子供もいます。あたかも生まれつきリーダーシップを持っているかのようです。しかし一方で子供の頃は泣き虫で、いじめられっ子だったのに、大きくなって立派なリーダーになった人も数多くいます。

■リーダーシップ特性理論

 リーダーシップ理論は1900年代から色々出てきましたが、最初に出てきたのが特性理論です。「行動力」「信頼」「説得力」「決断力」「誠実さ」などの生まれつきの様々な特質(trait) を持っている人が、良きリーダーだという説が出てきました。「偉大なリーダーには共通する特質がある」という前提によって、過去の優れたリーダーが持っている特質を明らかにしようとしました。

 調査の結果、成功しているリーダーが持っている特質は色々あって、全部数え上げると20項目以上の特質が出てきました。この中の5つだけと言うのであれば、重点的にそこを鍛えれば、立派なリーダーが育成できるかもしれません。実際20項目全てを身につけることは不可能です。人には必ず得意不得意はあります。例えば 「積極性」と「注意深さ」のように矛盾しがちな特性もあります。リーダーシップの特性には、どんな組織でも応用できる万能な特性はないのです。