
「失敗は成功の母」とは言われるものの、実際には、失敗の危険性の高いことに挑むのは勇気がいる。特に減点主義が蔓延している日本企業では、あえてリスクを冒さない“無難”志向が強く、それがイノベーションを阻害する要因とも指摘される。そうした中、グローバルで成功している優良企業の事例を交えながら、失敗を類型化し、失敗を通じて生産性を向上させるためのフレームワークを提供しているのが、『失敗できる組織』(エイミー・C・エドモンドソン著、土方奈美訳/早川書房)だ。同書の内容の一部を抜粋・再編集し、そのポイントを紹介する。
失敗から学ぶためには、その経験をオープンにして共有し、そこから教訓を導き出せるような「健全な失敗文化」が欠かせない。グーグルの親会社アルファベットで実践されている“賢い失敗”の推奨法とは?
健全な失敗文化

私はチームの人間関係が病院での医療ミスの報告に多大な影響を及ぼすことを発見して以来、どのような環境であれば人々は過度に恐れを感じずに働き、学習できるかを研究しつづけてきた。
人々が継続的学習やリスクテイク、問題が起きたときに迅速に報告することの必要性を理解している環境だ。そのような環境では人々は反対意見を歓迎する。失敗が起きたら、くよくよせず、オープンマインドでそこから学習し、前へ進み続ける。保身から解放され、勝つためにプレーできる。
本書の目的はみなさんが個人として上手に失敗する技術を実践するのを助けることだが、健全な失敗文化の下ではそれははるかに容易になる。あなたにとって大切なコミュニティでそんな文化を醸成するのに役立つ、いくつかの行動を紹介しよう。
まわりの人たちにコンテキストに関心を持ってもらう
自分たちが直面するリスクや不確実性のレベルを考慮したうえで、あなたがとるべきシンプルだが強力なステップは、まわりの人たちにもあなたが見ている景色を見てもらうことだ。
ベン・バーマン機長がフライトのクルーに「私は完璧なフライトというものを経験したことがないし、今日も経験しないだろう」と言うのは、彼らにコンテキストに関心を持ってもらうためだ。小児病院のジュリアンヌ・モラスCOOがスタッフに「医療は複雑な失敗が起こりやすいシステムだ」と伝えるのは、コンテキストに関心を集めるためだ。