予想6 生産性が低い企業が市場から退出を迫られ、合従連衡(がっしょうれんこう)が活発化する
デジタル技術などを活用した資本導入の動きは今後広がっていくとみられる。しかし、すべての企業が大規模な資本を活用できるだけの経営的体力があるわけではない。近年ではクラウドサービスなど安価なサービスが浸透してきているとはいえ、中小企業の中には人手も確保できず、かつ資本導入も進められない深刻な状況に陥っている企業も少なくない。
今後の経済を展望したとき、企業によってその展開は異なるものになると予想される。先の法人企業統計は資本金1000万円以上の企業を対象とした調査であるため、中小企業の利益水準の動向まではわからない。また、同統計は株式会社など主に営利法人を対象としたものであるため、公益法人なども対象に入っていない。
地域の飲食店や小売店、診療所から介護施設にいたるまで、企業がどれだけの利益を計上しており、経営者がどれだけの報酬を得ているのかは統計的にはブラックボックスである。おそらく、事業に成功して多額の報酬を得ている経営者もいるとはみられるが、経営的に余力がない事業者も多く存在していることだろう。
今後、賃金水準が高騰すれば、こうした利益水準が低く、生産性に劣る企業については市場からの退出圧力が強まることになると予想することができる。
昨今では企業経営者の高齢化に伴い、事業の後継者不足の問題も深刻化している。今後は規模の経済性を活かせない企業や、人材確保の観点から事業継続が困難になっている企業について、人手不足倒産の発生や優れた企業によるM&Aが活発化することなどによって、少数の事業者に集約化されていく展開になるだろう。
利益水準が高い企業のシェアが拡大していけば、生き残った少数の企業において資本導入が活発化し、経済全体の生産性は高まっていく可能性が高い。
<連載ラインアップ>
■第1回 労働市場の需給逼迫による持続的な賃金上昇は、企業に何を強いるのか?(本稿)
■第2回 政府による経済介入は終焉へ、人口減少下で企業・労働者・消費者が経験する「かつてない痛み」とは?(1月7日公開)
■第3回 特定技能制度の拡充で外国人労働者は増大の一途…日本経済の今後を左右する労働市場の「最大の論点」とは?(1月16日公開)
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