一方、2本以上製品を購入している企業では、わからないことがあれば互いに相談し合いながら課題を克服できるため、分析がスムーズに進んでいる傾向がありました。さらに、分析結果を共有することで、社内に活用の輪が広がり、新たな発見や効果にも繋がっていたのです。

 このことから、最初の販売時に製品を1本のみで販売するのではなく、2本以上をセットで販売することの重要性を認識しました。2本以上であれば、解約率の抑制に繋がるだけでなく、さらなる追加契約の可能性も高まります。

 1本のみの購入を希望する顧客に対しては、データに基づいた分析カルチャーの重要性を積極的に訴求するようにしました。たとえ小さな投資であっても、1本のみの購入では無駄になってしまう可能性が高いという事実を伝え、2本以上の購入を推奨していきました。

 営業リーダーがKSFを探し続け、見つけた他の例も紹介します。

 営業戦略で重視すべき指標として、初期購入時の平均顧客単価(AOS)があります。

 従来は個人単位での提案が中心でしたが、データ分析のニーズは個人に留まらず、部門全体に広がりを見せています。そこで、部門単位での利用を前提とした提案へと視野を広げることが重要となりました。

 個人向けの分析製品の場合、1契約あたりの年間売上は約10万円ですが、部門全体でデータを共有・活用するためには、ダッシュボード可視化ツールなど、別の製品との組み合わせが不可欠です。この場合、AOSは100万円を超える規模となります。

 AOSが100万円を下回る提案は、分析結果を共有するためのツールが含まれていない可能性が高く、顧客にとって「誰も見ないシステム」になってしまうリスクを抱えています。顧客にとって初期投資額は10万円から100万円へと跳ね上がりますが、10万円の投資では本来目指すべきデータ活用を実現できない可能性が高いのです。

 もちろん、高額な提案が必ずしも成功するとは限りません。しかし、AOSを意識した提案を行うことこそが、将来的な売上(KGI)に大きな影響を与える重要なKSFと言えるでしょう。