たとえばダイエットであれば、「減量」という目標に対して、「運動、食事、睡眠」はKSFとして重要ですが、これら以外にKSFは存在しないのでしょうか?

 年齢を重ね、ダイエットに失敗し続ける私自身の経験から、新たにエステなどの科学的なアプローチ(KSF)を取り入れることで体内深部から新陳代謝を促し、脂肪の燃焼を活発にすることも探るべきかもしれません。

 ビジネスにおいても重要なのは、売上達成(KGI)に繋がる主要成功要因(KSF)を見極め、仮説検証を繰り返しながら、KPI自体も柔軟に見直していくことなのです。

 私が以前に所属していた会社(タブロー社)では、サブスクリプション型の製品を扱っていました。最小契約金額が小さいため、毎年契約更新を前提としたビジネスモデルを採用し、リカーリングレベニュー(定期的な収益)によって売上を拡大していく戦略です。

 このビジネスモデルにおいて最も避けなければならないのが「解約」、つまりチャーンです。解約に関するデータ分析を行った結果、驚くべき事実が判明しました。なんと、製品を1本のみ契約している企業の解約率が非常に高い傾向が見られたのです。

 そこで、1本のみ契約している顧客に解約理由を直接ヒアリング調査してみました。「分析用の製品を購入したものの、使いこなせなかった」というシンプルな回答を得たのですが、さらに深掘りして理由を探ってみました。

 すると、データサイエンティストではない現場担当者が分析業務を任されることに、様々な不安を感じていたことがわかりました。

 特に、会社で1本しか製品を購入していない場合は、相談できる相手がおらず、孤立してしまうことが大きな要因となっていたのです。結果として、誰にも相談できずに諦めてしまい、解約に至るケースが多く見られました。

 また、仮に1人で分析を完遂できたとしても、周囲に共有し、巻き込んでいくような動きには繋がりにくい傾向がありました。その結果、「効果が出ない」と判断され、解約を選択してしまうケースも少なくなかったのです。