斉藤 今、日立製作所がチャレンジしているプランはちょっと面白いなと思っていますね。若くて優秀な社員たちによる特命チームを組織しているのです。これは故・中西宏明元会長(元経団連会長)たちが考えた方法なんですが、他社も真似してほしい施策だなと思いますね。
八田 ただ、日本には「経営のプロ」と言える社長が少ないのでしょうね。
斉藤 「プロ経営者」という言葉自体を嫌う企業人は多いですしね。トップがプロじゃなくても、せめて社外取締役がプロならもう少し事態は変わるのだと思いますが、その社外取もプロじゃない。だから、ワークしない。
八田 そもそも、社外取締役は本来、何社も掛け持ちできるような楽な仕事じゃないはずです。しかし、何社も掛け持ちして、まるで現役引退後の小遣い稼ぎのために社外取を引き受けている、そんな人もいらっしゃいますね。
斉藤 役員保険(会社役員賠償責任保険=D&O保険)だって、本来は株主の追及が厳しいから入るわけでしょう。社外取締役は株主代表訴訟の対象になり得るんですが、それを全然理解していなくて、名誉職みたいなつもりでお気楽に捉えている人、あるいは、引き受ける人が結構います。
誤解を恐れずに言いますが、社外取が株主代表訴訟で訴えられることだってあると思いますよ。そういう例が出て来たら、社外取の人たちももう少し緊張感を持つでしょう。
「役員定年になっちゃったから、どこか職はないですかね?」みたいなノリで、社外取を引き受けるのは本当に止めなければなりません。社外取がしっかりウォッチしていることで、企業がキリッとしていく。そういう姿であって欲しいのですが。
八田 企業が不祥事を起こすと、社長以下、業務執行のトップは記者会見でお作法通りに頭を下げますが、社外取締役が頭を下げる風景なんて見たことないですよね。
そもそも、不祥事会見になんて出て来ないうえ、自分のレピュテーションを下げかねないと考えてか、すぐ辞表を出して逃げてしまったり…。それどころか「こんな会社だと思わなかった」「経営陣に裏切られた」とか言い出す有り様です。
斉藤 社外取締役はとても重要な仕事で、その会社の重大なリスクを発見することは自分の身を守ることとイコールのはず。何が何でもアメリカの制度がいいとは言わないけれど、リスクに気づくことが自分のレピュテーションを守ることになるという自覚が、アメリカの経営者にはありますよ。