斉藤 厳しく監査してもらうことが、結局、経営者本人を救うことになると思えないところに問題がありますね。
八田 日本人は会議の場を前向きの議論の場と思ってないでしょう。だから、会議で異論を挟まれると、人格を傷つけられたような気になる。それどころか、決議機関の会議なのに決議をとらず、“全会一致”ってことにしちゃう。構成メンバーの数が偶数で、時として多数決が機能しないような会議体も結構あるくらいです。
斉藤 日本社会はよくそれで今までやって来られたな、と痛感する今日この頃です。どんなデータを見ても、現在の日本は国際競争力でどんどん諸外国に追い抜かれているのに、それでも目が覚めない。
「エンタープライズバリュー」(EV)の概念なんて、中国人経営者のほうがはるかに理解していますよ。社外取締役を形だけ入れて、やるべきことをやっているような気になっている場合じゃない。データは戦略を練るための“種”であり、コーポレートガバナンスの基礎になるものです。
八田 「ESG投資は企業利益とは関係ないもの」と考えるのも間違いですね。
斉藤 企業が利益を出すプロセス自体が社会貢献なんだという発想をしないとダメですね。空気をきれいにしながら、自社の利益を最大化する。社会貢献と利益を出すことを分離して考えていてはいけません。
利益を最大化するプロセスの中で、企業が社会のコストを過剰に使ってしまうとか、誰かを犠牲にするということは許されない時代なのです。そして、その企業活動をステークホルダーが見張っていこうというのが、コーポレートガバナンスです。
八田 ガバナンスの議論は不断に続けられなければなりません。そのような意味でも、また斉藤さんのお話をじっくり拝聴する機会をいただきたいですね。本日はありがとうございました。
<連載ラインアップ>
■第1回 株主に揉まれて企業は強くなる ROEが通じなかった日本に「コーポレートガバナンス・コード」はいかに導入されたか?
■第2回 「監査役会設置会社」「指名委員会等設置会社」「監査等委員会設置会社」…曖昧さの残る仕組みは本当に機能するのか
■第3回 日本には「プロ」がいない 企業をキリッとさせる本物の「経営者」「社外取締役」の本分とは?(本稿)
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