次に任されたのが生理用品で、最後が本命商品のオムツのコンサルティングだった。一番の問題は、当時掛川に70億円を投じて作った製造機械が、すぐに不具合を起こしてストップしてしまうことだった。
実際に工場に行って見てきたが、確かに使い物にならない。そこで高原さんの故郷の四国に古い機械があったのを掛川まで持ってきて、新しい機械をやめて古い機械で生産をすることにした。
投資した新しい機械を捨てるわけだから、トップとしては思い切った決断だ。しかも古い機械を復活させるのだから、普通なら躊躇うだろう。ただし、これも高原さんは実行してくれた。するとすぐに利益率が改善したのだ。
そこで次の問題が、機械を購入した70億円の赤字だ。そのまま決済すると株価が下がり、転換社債の転換ができなくなる恐れが強かった。
「高原さん、品川に70億円の土地を持っていますよね。それを売って会社に寄付したらどうでしょうか」と提案した。
さすがに高原さんも「めちゃくちゃなことを言うなよ」と頭を抱えたけど、70億円の廃棄損失を出して株価が下がり、転換社債がダメになったらどうなるか?
「あなたが持っている財産のほとんどがユニ・チャームの株でしょう? 株価が一気に下がったらその損失の方がずっと大きい。私がちゃんと計算したから、どっちが得か損かはっきりご覧にいれましょう」
実際に数字を挙げて、70億の私財を投げた方がずっと得だと説得したら、これも高原さんは受け入れて実行してくれた。
そんなことがあって、その後ユニ・チャームの株は高騰して2倍、3倍どころか、いまや当時の何十倍にもなっている。高原さんから見たら、私などは実際のビジネスのことなどわからないただの若造だっただろうが、受け入れがたい提案も腹を括って採用してくれた。結果的に、それが現在のユニ・チャームにつながったと思う。
素直に受け入れてくれれば、コンサルティングの効果はとても大きなものになる。自慢や誇張ではなく、実際の話として強調したいと思う。
<連載ラインアップ>
■第1回 元BCG代表・堀紘一氏が、元ホンダ副社長から教えられた「本当のコンサルティング」とは?
■第2回 食事の誘いを断るコンサルタントには、なぜ気を付けた方がいいのか?
■第3回 ホンダ、ソニー、第一生命…コンサルティングを生かして躍進した企業の共通点とは?(本稿)
■第4回 会社のレベルは会議に表れる…コンサルタントから見た、仕事を「しやすい会社」「しにくい会社」とは?(12月4日公開)
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