日々の仕事に目標と誇りをもたらす「麺職人制度」

 自分の日々の仕事に目標や誇りを持つ。これは、生き生きとやりがいを持って働くために重要なことです。そのために2016年から実施しているのが、丸亀製麺の「麺職人制度」です。この制度には、各店舗で提供するうどんを期待以上のおいしさにしていくことに加え、自分の仕事に誇りを持って働く人を増やす目的があります。製麺の作業はともすればルーティーンになりがちです。毎日同じことを繰り返すのではなく、日々上達していきたいと思えるような目標を設定したかったのです。

 試験を受けてもらい技術や経験によって4つのレベルに分け、麺職人と認定します。スタート当初から、合格率は30%くらい。すごく難しい試験です。最上位の四つ星とその下の三つ星に認定された人はまだいません。二つ星は全国でたった9人だけ(2024年5月現在)。だからこそ、社内で憧れられるポジションになっています。

 以前からそうだったのですが、この制度ができてから、より製麺担当者のうどんへの思い入れが強くなったように感じます。みんな「自分の麺が一番うまい」と思っているでしょう。製麺について話し出すと止まらないのです。

 さらに丸亀製麺では麺職人が主役のCMを作り、ウェブサイトに麺職人へのインタビュー動画を公開しました。自分でその動画を見たり、動画を見た同僚やお客様に「動画見たよ」「かっこよかった」などと反応をもらったりしたら、その麺職人は確実にモチベーションが上がります。実際、麺職人に認定された人の離職率はかなり低いのです。

テレビCM「面職人の情熱」編
画像提供:トリドールホールディングス

 現在、麺職人は全国で1700人以上(2024年5月現在)います。だんだん麺職人制度の知名度も高まってきて、お客様が「ここに二つ星の麺職人がいると聞きました」と遠くからわざわざ来店してくださることもあるのです。

 麺職人制度が知られるようになるということは、丸亀製麺のうどんへのこだわりも知っていただけるということ。それは結果的に来店動機につながり、客数の増加につながると考えています。

<連載ラインアップ>
第1回 「新規参入でもシェアを取れる」トリドールHD粟田社長が語る、外食産業市場のダイナミックな可能性とは?
第2回 「製麺所の風情を手放したら丸亀製麺ではなくなる」トリドールHD粟田社長が語る“二律両立”の経営とは?
■第3回 省人化の時代に、なぜ丸亀製麺は“増人化”へ舵を切ったのか?トリドールHD粟田社長が語る「体験価値」(本稿)
■第4回 トリドールHDが始めた「KANDO開拓コミッティ」とは?離職率が下がれば顧客満足度が高まるメカニズム(12月3日公開)
■第5回 トリドールHD急成長の土台、従業員一人ひとりが持つ成長哲学「トリドール3項」とは?(12月10日公開)
■第6回 国内外で年間250店、トリドールHD粟田社長はなぜ新規出店の意思決定を人に任せるのか?(12月17日公開)

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