kelly marken – stock.adobe.com

 DXの導入により、各企業で仕事の内容や進め方が大きく変化している。従業員のリスキリングやITエンジニアの採用、IT企業との協力に多大な資金とエネルギーが費やされている。だが一方で、肝心のチームマネジメントが従来の“日本的な管理方法”のままであるため、企業や組織、そして働く人がDXの恩恵を享受するに至っていない――。本連載では『DX時代の部下マネジメント』(ロッシェル・カップ著/経団連出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。変革の時代のリーダーシップのあり方とは? そしてチームの究極の姿である「自ら動く自己管理型チーム」を創出するには? GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)など世界一流の企業で採用されているマネジメント法から、DX時代に合った具体的な手法を紹介する。

 第2回は、「チームマネジメント」と「日々の業務遂行」が円滑に行われる究極の姿「自己管理型チーム」の創出へ向けて、行うべき施策を説く。

<連載ラインアップ>
第1回 スティーブ・ジョブズの言葉に学ぶ 部下の士気を上げるには、なぜ“ムチ”より“アメ”がはるかに有効なのか?
■第2回 なぜ部下は、すぐにあなたを頼ってしまうのか? 指示待ち型の部下を自ら動かすための「11の戦略」(本稿)
■第3回 なぜアメリカ人は、大げさな言葉で相手をほめるのか? 部下の心に響く「ポジティブ・フィードバック」とは(11月15日公開)
■第4回 グーグルでも実証 「心理的安全性」を高め、チームのハイパフォーマンスを生み出すための舞台設定とは?(11月22日公開)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

部下の自信を高めることが重要

DX時代の部下マネジメント』(経団連出版)

 私がクライアントと仕事をしていて頻繁に観察する問題は、日本人の従業員の中には、仕事を任せられたり、自己管理型チームで働いたりする準備ができていない人がいるということです。その理由は、彼らはこれまでのキャリアにおいて、常に上司の指示のもとで働いてきたからです。そのため、自分の判断で行動するのではなく、指示や命令を待つ傾向があるのです。

 このような背景を持つ部下がいる場合、自信を持たせることに時間をかける必要があるかもしれません。

 あなたがマネージャーで、部下に仕事を任せたいとします。しかし、その部下は以前、マイクロマネージャー的な上司のもとで働いていました。その部下は自信がなく、仕事を任せてもあなたに質問ばかりして、あなたに決めてもらいたがります。

 ここでは、部下が任せられた仕事を自分でこなすことに慣れるための戦略をいくつか紹介します。

[1] 信頼関係の構築

 部下が安心し、サポートされていると感じられるような信頼関係を築きましょう。よい行動へのポジティブなフィードバックや部下の長所を認めることで、部下の判断力と能力を信頼していることを示します。

[2] 段階的な権限委譲

 リスクの少ない小さな仕事、あるいは大きな仕事の一部だけを任せることからはじめましょう。そうすることで、徐々に自信をつけさせることができます。彼らが能力を発揮するにつれて、任せる仕事の複雑さや責任を徐々に増やしていけます。

[3] 明確な期待

 望まれている結果、期限、具体的なガイドラインなど、タスクに関するあなたの期待を明確に伝えましょう。仕事を理解させるだけでなく、その達成方法を決める自己決定権があることも明確にします。

[4] リソースとサポートの提供

 タスクを完了するために必要なリソースや情報をすべて利用できるようにしましょう。指導を受けることができることを伝えますが、助けを求める前に、まず自分で解決策を考え出すよう促します。

[5] 安心感を与える

 あなたが部下をサポートしていることを伝えましょう。特に日本の組織では、うまくいかなかったときに自分が責められることを恐れて、全責任を負うことや決断を下すことをためらう部下が少なくありません。このような恐怖心は組織にとって非常に不都合なものであり、排除する必要があります。

 部下には、すべてを完璧にこなすことを期待しているわけではないこと、問題があっても責められたり罰せられたりすることはないこと、そしてあなたは何があってもサポートし、バックアップする存在であることを知らせ、安心させましょう。