提供:シンフォニーマーケティング

 B2Bマーケティングの支援企業であるシンフォニーマーケティング(東京都千代田区)は8月7日8日の2日間、オフラインイベント「IGC Harmonics 2024」を都内で開催した。本稿では、RevOps(レベニューオペレーション)の専門家で、25年以上B2Bマーケティング支援をしてきた同社のアドバイザー、スティーブ・ゴシック(Steve Gershik)氏による講演の内容を紹介する。

 同氏は、多くの大企業で縦割り組織の弊害によって営業効率やデジタルマーケティングのROIが低下していると指摘する。RevOpsの導入でこうした課題を解決できると唱えるゴシック氏。RevOpsのメリットおよび効果的な活用法とは。

複雑化するカスタマージャーニーを合理化すべき

「RevOpsは現在のB2Bマーケティングにおいて、最も重要なコンセプトの一つだ」

 こう唱えるのは、米国のマーケティング・コンサルティング企業、28MarketingのCEO スティーブ・ゴシック氏だ。ゴシック氏は25年以上にわたり企業のB2Bマーケティングを支援してきた。MA(マーケティングオートメーション)ツールを提供するエロクア(Eloqua)社(現オラクル社)では売上高を300万ドルから7000万ドルにまで成長させた実績もある。

 RevOpsとは、Revenue Operationsの略称で、部門の枠を超えて“組織全体”の収益性の改善を最優先する戦略を指す。営業やマーケティング、カスタマーサクセスなど企業の各部門のデータを統合し、部門間で共通のKPIを立てることで、収益アップを狙うのが目的だ。

 今、B2Bマーケティングの成功にRevOpsが求められている理由について、ゴシック氏は、RevOpsには「サイロ化の解消」と「複雑化する購買プロセスにおける適切な対応」という大きなメリットがあることを挙げる。

 まず、サイロ化の解消がなぜ必要なのか。

 B2Bの購買においてこれまでの顧客は、売り手側の営業部門とマーケティング部門による一貫性のない対応や、それに伴う無駄なやり取りなどを我慢していた。例えば、マーケティング部門から送られてきた新製品のキャンペーンメールには「割引する」と書かれていたのに、いざ新製品を導入しようとすると、営業部門からは通常価格で案内された、というようなケースだ。

 なぜこうしたことが起きていたのか。それは、マーケティング部門はリード顧客数(見込み顧客)の増加をKPIにしているが、営業部門は売り上げアップがKPIという事象が頻繁に見られるからだ。

 売り手側の企業からみると、A社というリード顧客は一つの会社に過ぎないが、異なるKPIを持つ営業・マーケ部門にとって、A社はそれぞれ異なる企業に見えてしまう。

 だが、顧客から見ると、売り手の内部事情など関係がない。営業部門とマーケティング部門から異なる対応を取られると、信頼を失うのも無理はないだろう。

 B2Bのビジネスにおいて、以前は売り手側が「商品・サービス情報」を独占していた。そのため顧客も「営業とマーケティング部門の連携が取れておらず対応は悪いが、他の商品・サービスも容易には探せないし、この会社から購入しよう」と我慢するしかなかった。

 しかし、インターネットが普及した現在は、B2Bビジネスにおいても他社の商品・サービスの情報を容易に入手できるようになり、商品を比較検討しやすくなっている。

 実際、フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の調査によると、「約70%の顧客が企業に問い合わせる前に、すでに情報収集を済ませ、購入を大方決定している」という。顧客からしてみれば、一貫した対応を取ってくれる企業を選びやすい状況が整ってきている。外部環境の変化により、売り手側が一方的に情報をコントロールする「殿様商売」は、もはや通用しなくなったのだ。