1910年、創業者の藤井林右衛門が横浜に開店した洋菓子店をルーツとする老舗食品メーカーの不二家。洋菓子事業と製菓事業が柱の同社は、コロナ禍の巣ごもり期間で“おうちスイーツ”需要が伸びたものの、コロナが収束した2023年は一転、巣ごもりの反動減に原材料高も重なり苦戦した。今後の不二家の勝ち残り戦略について、同社の河村宣行社長に話を聞いた。
- 激安店に負けず「子育て世代」取り込みへ、平和堂が実践する地方チェーンならではの店作り
- 大手総合スーパーの苦境を横目に滋賀県基盤の平和堂が店舗を次々大規模リニューアルする狙い
- 富士通・時田社長が力を込めて語る、矢継ぎ早に変革に取り組む“本当の意味”
- 目指すは「バッテリー一本足打法」からの脱却、TDK齋藤社長が語る“未財務資本”に根差した変革の道筋
- 「未知の魅力的なものを世の中に伝えたい」 J.フロント リテイリング最年少社長が描く“価値共創リテーラー”の真髄
- J.フロント リテイリングの歴代最年少社長、小野圭一氏が見てきた百貨店業界の浮き沈みと一大転機
- 湖池屋を再生させた凄腕マーケター、佐藤章社長が挑む「ポテトチップス革命」
- 店内で調理する「ふわふわ卵のカツ丼」が人気のセイコーマート 商品開発のモットーは「お客の声を聞かない」
- 道内シェアトップ、8年連続コンビニ顧客満足度1位…本州で寡占市場つくる競合に負けないセコマの独自戦略とは
- サントリー食品の小野真紀子社長が語る、新たに定めた企業DNAに「Seikatsusha」(生活者)の文字を入れ込んだ理由
- 女性リーダーの登用を進めるサントリー食品インターナショナル、小野真紀子社長が海外事業で学んだ「チーム力」
- 「先々のライバルは既存の銀行ではなくなる」auじぶん銀行・田中健二社長が見据えるネット専業銀行の勝ち残り戦略
- グループ売上高の3割に急成長、太陽HD・佐藤英志社長が振り返る「医療・医薬品事業」参入の裏側
- タニタが6年前に始めた社員のフリーランス化「日本活性化プロジェクト」の今
- 三井住友銀行・福留頭取が約16年の海外駐在で実感した「現場主義」の大切さ
- レンタルからリユース事業への転換で成長、ゲオホールディングス遠藤結蔵社長が語る「先見力」の源泉
- 「人づくりこそ最大のミッション」カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長が描く“知的資本カンパニー”実現の秘策
- 新生Vポイント、旗艦店リニューアル…新プロジェクトを次々に仕掛けるカルチュア・コンビニエンス・クラブの狙い
フォローしたコンテンツは、マイページから簡単に確認できるようになります。
苦渋の決断を強いられた「減量政策」と「価格改定」
──昨年(2023年)は巣ごもり需要の反動減に加えて原材料高が追い打ちをかけ、一時的に業績を落としました。
河村宣行氏(以下敬称略) 最もインパクトがあったのは鳥インフルエンザの影響で、それまで物価の優等生と言われてきた卵の価格が2023年の年初から高騰したことです。
品薄状況になる中でスーパーへの卵の供給が最優先されたので、われわれが使用する加工用卵は大きな供給制限を受けました。価格が高騰した上に量も確保できないという二重苦に陥ったわけです。その結果、洋菓子事業が苦戦を強いられました。
また、洋菓子事業以上に打撃を受けたのが製菓事業でした。すでに2022年から始まっていた原材料高の中、価格は据え置いて内容量を減らしたりすることで対処してきましたが、それも限界に近づき、2023年3月に価格改定をしています。
製菓事業の中で販売ボリュームが最も大きい商品は「カントリーマアム」や「ホームパイ」など、われわれが「大袋」と呼んでいる特売中心に売る価格訴求型商品です。その大袋商品を値上げしたことで消費者の方々が敏感に反応し、一時期は販売が前年比で60%の水準まで落ちました。そうなると当然、工場の稼働率も低下しますので、利益を下押しする結果になりました。
──今年に入って売り上げは回復基調にあるそうですが、底打ちの手応えはいつ頃からありましたか。
河村 昨年10月、工場の稼働率を上げるために思い切って商品の増量をしましたが、そこからようやく販売数量が回復してきました。
増量政策は今年3月まで続けて、4月以降は再度、内容量を減らしたのですが、おかげさまで売り上げは伸びています。売れ筋の大袋商品の値上げは当社が先行したことで大きな影響が出ましたが、競合商品も値上げしたことで、消費者が価格にある程度慣れてきたこともあるかと思います。そのため、昨年は減益だった製菓事業ですが、一気に回復している状況です。
──とはいえ、今後も原材料高は続く可能性があります。
河村 はい。今はチョコレートの主原料であるカカオ豆の価格が高騰しており、今年に入ってチョコレート商品は4月、7月、9月とすでに3回の値上げを実施している状況です。
内容量を減らせる商品もありますが、例えばチョコレートの「LOOK(ルック)」は12粒入りで箱がピッタリサイズですので減らせません。箱をサイズダウンしようと思えば生産設備も全て変えなければならず、大ごとになってしまいます。洋菓子事業のケーキをはじめ、チョコレートを使用する商品が非常に多い当社にとっては頭の痛い問題です。