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「パーパスやバリューなど、カタカナ語で表される言葉の対象は従業員に伝わっているでしょうか」と問いかけるのは、東京都立大学・経済経営学部にて教鞭を執る松田千恵子教授。企業価値向上のために、経営層はいま何に取り組むべきなのだろうか。

※本稿は、2024年5月に配信されたJapan Innovation Review Forums「バックオフィス・イノベーションWeek」における「基調講演:企業価値向上に資するコーポレートガバナンス~いま企業は何を見直すべきか/東京都立大学 大学院 経営学研究科 教授・経済経営学部 教授 松田千恵子氏」の講演内容をもとに制作しています。

松田教授が注目する5つの経営課題

松田 千恵子/東京都立大学 大学院 経営学研究科 教授 経済経営学部 教授

日本長期信用銀行にて国際審査、海外営業等を担当後、ムーディーズジャパン格付けアナリストを経て、コーポレイトディレクション、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトンでパートナーを務める。一橋大学大学院特任教授。事業会社の社外取締役、政府等の委員を務める。東京外国語大学卒業、仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院経営学修士、筑波大学大学院企業科学専攻博士課程修了。博士(経営学)。

 金融機関や資本市場からみた企業評価や、企業のトップマネジメントチームへの助言経験も豊富な松田教授。経営者がいまこそ意思決定すべき内容は、個別事業だけではなく全社グループ共通の課題への対処だと言う。

 そのなかで松田教授は、次の5つを注目している経営課題として挙げた。

1 「会社の目指すべきところ」の議論を増やす必要がある
2 経営戦略とサステナビリティが統合されている必要がある
3 事業ポートフォリオマネジメントと経営管理が問われる
4 人的資本改革と人権問題への対処は喫緊課題である
5 全社的なリスクマネジメント強化を行う必要がある

 以下では、1.「『会社の目指すべきところ』の議論を増やす必要がある」の具体的な内容について、松田教授の講演から一部抜粋、再構成してお伝えする。