住友電気工業 生産技術本部テクニカルトレーニングセンター長の篠木秀次氏(撮影:本永創太)

 強い工場長を育成する「工場長研修プログラム」や、約11カ月に及ぶ技術職(技能職)の新入社員研修など、個性的な“モノづくり人材”教育を行っているのが住友電気工業(以下、住友電工)だ。これらの研修は、同グループの教育をグローバルで体系化した企業内大学「*SEIユニバーシティ」のカリキュラムの一環として行われている。どのような形で、どんな内容の研修を行っているのか。住友電工 執行役員 人材開発部長の國井美和氏と、生産技術本部テクニカルトレーニングセンター長の篠木秀次氏に聞いた。(第2回/全3回)

*SEI(住友電工の英語表記Sumitomo Electric Industriesの略)

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デジタル時代の今こそ、徹底した「現物教育」を

 住友電工の伊丹製作所にある「テクニカルトレーニングセンター(TTC)」。ここはグループのモノづくり研修拠点であり、190台以上の実機ユニットを使って研修を行っている。誕生したのは2008年。それまでの社員研修は部門ごとのOJTや座学が中心であったが、実機に触れながら原理原則と五感を通じて学ぶ研修プログラムを開発し、この拠点に集約してグループで統一的に実施する専任部門を組織した。

伊丹製作所にある「テクニカルトレーニングセンター(TTC)」(提供:住友電工)
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 毎年入社する新入社員も、ここで研修を受けている。

「特に技術職(技能職)の新入社員は、子会社も含めたグループ全体の新入社員を対象に約11カ月の研修プログラムが用意されています。約4カ月の共通的な基礎研修を受講した後、配属後の業務に合わせて、工場実務実習および先進技術研修コースと、設備保全・設計専門研修コースの2つのコースに分かれて約7カ月の専門的な研修を行います」

住友電工 執行役員 人材開発部長の國井美和氏

 こう説明するのは、人材開発部長の國井美和氏。人材開発部は、グループのあらゆる研修・教育を体系化した企業内大学「SEIユニバーシティ」を統括しており、TTCの研修もこの枠組みに含まれる。

 新入社員においては、前述の技術職に加え、専門職(総合職)に対しても、モノづくりにおける安全、品質の基礎から教えていく。具体的には、住友電工グループが大切にするSEQCDD(※)の重要性と、それらの観点でモノづくりのレベルをどう高めていくかを教え込む。

※住友電工グループ事業活動の基本要素。S:安全、E:環境、Q:品質、C:コスト、D:物流・納期、D:研究開発を意味する

 研修では、特に手を動かしながら学ぶ演習を重視している。TTCの研修を管轄する篠木秀次氏は、「技術職研修では、モノづくりの難しさと楽しさを体験してもらうために、金属の板材から切出し・切削・仕上げなどの加工を経て規定の製品を製作していきます。専門職研修では、設備の基本原理を学んでもらうために、小型の自動機をバラバラの部品の状態から組立てて、配線や制御プログラムを作って規定の動作をさせるところまで、受講生が自分たちで行います」と話す。

 デジタルの発達により、昔に比べると工学系・機械系の大学出身者であっても手を動かしてモノを作ったり、組み立てたりした経験がほとんどなくなっている。知識は持っていても、実機や現物に触れて五感で感じながら原理原則を理解しないと、実際の業務で生かすことができない。その中で、こうした現物教育の重要性が増しているという。

「一方で、専門職の2年目の研修は視野を広げ、製造から出荷までモノづくり全体の仕組みとSEQCDDのポイントをより深く学びます。3年目はさらに新製品の設計段階での品質のつくり込みや、コスト低減とリードタイム短縮などの、より高度な研修を行っていきます」(篠木氏)