画像提供:日産自動車

 Japan Innovation Reviewは5月16日、フロスト・アンド・サリバン・ジャパン(以下、フロスト&サリバン)と共同で、LIVEウェビナー「世界のEV市場の展望と日産自動車のEV戦略」を配信した。本稿の前半は、フロスト&サリバンの本多正樹氏による基調講演「世界のEV市場の展望と2024年予想トップ10」から、後半は日産自動車の江嵜智和氏による特別講演「日産自動車 電気自動車事業の取り組み」から、そのエッセンスをお届けする。

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2023年の世界のEV市場はどうだったのか?

 基調講演を担った本多正樹氏は、自動車メーカーや自動車部品メーカーを経て、フロスト&サリバンで14年にわたり世界の自動車産業の動向を分析し続けているエキスパート。

 冒頭、本多氏は2023年のEV市場のハイライトとして、以下の5点を取り上げた。

  • 全世界で1410万台以上が販売され、BEVのシェアは70.2%、PHEVは29.8%で、前年同期比41.9%の伸びを記録
  • 世界のEV普及率は2022年の13%から2023年には16%に上昇。中国を含むアジア太平洋地域(APAC)は、小型車セグメントにおいて23%と世界で最も普及率が高い
  • BYDの販売台数は290万台以上で引き続き首位、テスラは180万台で2位を確保
  • 全世界のバッテリー供給量は、68万メガワット時(MWh)以上であり、CATLは市場シェア33%で引き続き首位、BYDは17%のシェアで2位を確保
  • 充電器の設置数は2023年には400万基に達し、電気自動車11台に対して充電コネクタ1基の割合
本多 正樹/フロスト・アンド・サリバン アジアパシフィック モビリティ部門 ヴァイスプレジデント

自動車会社海外営業、自動車部品会社IR、ロジスティクス会社営業開発を経て、フロスト&サリバンのモビリティ(自動車・交通)部門のコンサルタントとして14年の経験。クライアント企業に対して市場環境分析や市場参入戦略策定を行っている。

 本多氏は、2023年の世界のEV販売台数が1410万台となったことについて、「前年比42%増と大きな成長でしたが、1500万台という当初の予測よりは低くなりました」と指摘。「2023年の後半から伸びが少し落ち着いてきたことが要因」と付け加えた。

 メーカー別の市場シェアでは、中国のBYD(比亜迪)が290万台以上を販売し、2022年に続いてトップに。2位は米国のテスラで180万台となった。

 全世界のバッテリー供給量は68万メガワット時(MWh)。そのうち、中国のCATL(寧徳時代新能源科技)が3割を超えるシェアを占めて首位に。2位にはEV販売台数で首位のBYDが17%で続いた。

 充電器の設置数は400万基に到達。EV11台に対してコネクタが1基という割合になった。

2024年のEV市場はどうなる?

 それでは、2024年のEV市場はどうなるのか。本多氏は次のように話す。

「EVの販売台数は1850万台に達すると予測しています。2023年比で30.6%の伸びです。2021年から2022年にかけての成長率は55%、前述のように2022年から2023年の成長率は42%でした。その点で30%というのは低い数字に感じますが、私は大きい伸び率と見ています。成長率が下がっているのは、EVの市場での浸透率が15%を超えており、普及期に入っているからです。従来のように40〜50%の伸びを期待することは難しいですが、普及期に入りながらも30%の成長率というのは決して低くありません」

出所:フロスト・アンド・サリバン「世界の電気自動車市場の展望と2024年予測トップ10」
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