アジャイル型の組織変革と人財育成とは?

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新しい組織に配置されたメンバーたちの持っている技術や知識レベルには差がある。これまで同じ部署で同じ仕事をしていたメンバー同士でさえも、スキルセットが全く違うことが社内調査により見えてきた。
そこで、新しい部門で期待される役割、期待されるスキルとのギャップを埋めるべく、各課のリーダーたちは、一人一人が担当する仕事を通じて、今後どのようなスキルを修得していくか、その道筋をメンバーに指示している。
指導の方法に決まったルールはない。7人のリーダーたちに任せているのだが、リーダーたちは、メンバー一人一人のスキル、仕事の理解度を確認しながら、指導する内容をその都度変えており、勉強会を実施している課もある。こうして絶えずやり方を工夫していく姿勢が、「アジャイル型ソフト開発」のアプローチと似ていることから、社内では「アジャイル型組織変革・人財育成」と呼んでいる。
これまで、「能力開発」と言えば、決まった研修プログラムを受講させるやり方が多かった。こうした方法は、知識を効率的に習得させるには有効だが、一人一人の仕事に対する意識・姿勢まで変えることは難しい。
マクニカが今、IT部門に求めているのは、安藤CIOが言うところの「改革の意識」であり、能動的に働く姿勢だ。そのためにもまず、システムの開発・運用だけでなく新規事業に企画段階から関わる「新しい働き方」が当たり前の職場を編成し、実際に働いてもらう。
メンバー一人一人が自分に足りないスキルを実感し、自らそのギャップを補いながら、成果を積み上げていく方が、より実践的であり、結果的に仕事への意識も変貌していく可能性が高いのだ。もちろんこの「アジャイル型人財育成」の評価が出るのはまだ先ではあるが、既にIT部門のメンバーたちは事業部門と一緒に活動を始めている。
一人一人に「なぜ変わる必要があるのか」考えてもらう
IT部門の変革・人財育成に取り組む安藤CIOは、マクニカが求めるIT人財とその育成方法について、こう語る。
「従来のIT部門では、ユーザーが要件を出す人で、自分たちは作る人とのマインドが自然と身に付いてしまい、他部門からは受け身、受動的と見られがちでした。今後、より売上や利益に直接貢献する組織になるためには、自らが能動的、積極的に事業部門と関わり、新しいサービスやソリューションの開発にも企画段階から関与していく、このようなマインドセット変革が必要です。
ただ、トップダウンでこのような話をしても、長い期間をかけて染み付いたマインドセットをなかなか変えることはできません。やはり、メンバー一人一人が、なぜ変わる必要があるのか、どう変わるべきなのか、そのためには自分は何をすべきかなど、自分事として考え、理解することが重要です。そのためには、アジャイル型の組織変革が有用だと信じ、進めています」
連載ラインアップ
■第1回 売上高が2年で倍増し1兆円突破、マクニカの躍進支えた「10年後も楽しく働く」ための次世代システム
■第2回 「成長」の次は「改革」へ投資、マクニカが目指す「稼ぐIT」とは?
■第3回 今のままではIT部門は不要に・・・CIOの危機感から生まれたマクニカの「アジャイル型組織改革・人財育成」(本稿)
■第4回 「稼ぐIT」をどう実現? マクニカが挑む「6つの新規事業」と専門家集団「DXファクトリー」構想とは
■第5回 マクニカCIO・安藤啓吾氏が語る、「IT改革」の3つの施策、「稼ぐIT」への挑戦、そして「2030年の到達点」
■第6回 マクニカCIO・安藤啓吾氏が語る「稼ぐCIO」の条件、「デジタル人材」に必要な3つの力とは?
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