営業利益率は55%超、社員の平均年収2000万円超――製造業の衰退が叫ばれる中、FA(ファクトリーオートメーション)機器を製造・販売するキーエンスは群を抜く高業績で注目を集めてきた。同社でセールスや新規事業立ち上げを経験した岩田圭弘氏は「各個人の圧倒的なパフォーマンスの高さ」が同社の強みだという。本連載では、『数値化の魔力 “最強企業”で学んだ「仕事ができる人」になる自己成長メソッド』(岩田圭弘著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集し、仕事のパフォーマンスを高める“キーエンスの数値化”について解説する。
第1回は、キーエンス社員が短期間で一流の人材に育つ理由を紹介する。
<連載ラインアップ>
■第1回 毎日の業務を数値化すると、なぜ“10倍速の成長”が可能になるのか(本稿)
■第2回 “会社から与えられた目標”をゴールに設定すると、なぜ未達に終わるのか
■第3回 仕事の成果が低い時、「能力不足かも」と悩む前にすぐやるべきこととは?
■第4回 「行動の量」を増やすことが、“根性論”にならない理由とは?
■第5回 「行動の量」を増やしても、残業が増えない発想とは?
■第6回 なぜ、「数値目標が設定しにくい業務」の数値化が重要なのか?
■第7回 部下を“茹でガエル”にするマネジャーの、典型的なチームの状態の捉え方とは
■第8回 数値化が苦手なマネジャーは、なぜ感情的に部下を叱るのか?
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キーエンスの2022年度の「従業員一人当たりの売上高」は約8700万円 (※2) で、「一人当たりの営業利益」は4821万円となっています(※3)。
今、「日本企業全体の一人当たりの営業利益」の中央値は約253万円 (※4 )ですので、キーエンスの社員は「日本の平均社員の約20倍の利益」を叩き出していることになるのです。
私の記憶では、新卒の新入社員でも、入社初年度から4000万~6000万円を売り上げていたと思います。
この全社員の個人としての「圧倒的な成果」の集合が、近年のキーエンスという会社全体の成長を実現させているのです。
※2 日経クロステック『営業利益率は54・1%、2022年度も高収益のキーエンス決算』(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/15116/)
※3 日本経済新聞『キーエンス貫く「知の共有」1人あたり営業利益4800万円 成功再現を追求/秘訣の独占禁止』(https://www.nikkei.com/nkd/company/article/?DisplayType=1&ng=DGKKZO62624900U2A710C2TB1000&scode=6954)
※4 ザイマニ『労働生産性 一人当たり営業利益』(https://zaimani.com/financial-indicators/labor-productivity/)
■1年で「他社の10年選手」が育つ
「とはいえ、それは優秀な人材を集めているからでしょ?」
そう思った方も多いでしょう。
しかし、キーエンスは新卒採用を中心とした会社です。
特に、営業職については中途採用は行なわず新卒採用のみとなっており、基本的に企業として「すぐに結果を出せる経験者を採用する」という考えはしていないのです。
さらに、そんな新卒採用においても、「学歴を重視しない」ことを方針としています。他の一流企業のように「新卒者に有名大学出身者ばかりが並ぶ」ということもなく、「大卒でも高卒でも、同じように結果を出せる」という考えを基本としています。
実際、上層部にも高卒の方や、早慶上智や関関同立以外の大学を卒業された方が多く在籍していました。
むしろ、キーエンスの神髄は、「どんな人材でも、短期間で〝圧倒的な結果が出せる人〞に成長させることができる」という点にあるのです。
「あそこの会社の社員は1年で目覚ましい成長を遂げる。他の会社で同じレベルに達するには10年はかかるでしょう」
こう表現するのは、普段、キーエンスの社員と接する顧客や取引先の方々です。それほどに、キーエンスの社員は圧倒的なスピードで成長をし、瞬く間に「仕事ができる人」に変貌を遂げるのです。さらに、キーエンスの社員の成長スピードの速さは、「人材市場」でも高い評価を受けています。
「私どもはハイクラス人材専門なので、基本的に一流企業のエグゼクティブ層である30代から40代の方にしかお声がけしないのですが、キーエンスの社員さんだけは20代の方でも会うようにしているんです」
これは、私が20代の頃に、ヘッドハンターから声をかけられたときに言われたことです。
人材の評価をするプロフェッショナルの目からも、「キーエンスの社員は短期間で一流の人材になる」ということが認められているのです。