2024年は、ビジネスにおける生成AI(人工知能)の活用がますます加速していく年となるだろう。AIが企業の生産性や競争優位性を大きく左右しうる技術であることは間違いないが、一方で、まだ発展途上の技術であるため不確実性は高く、企業がAI戦略を迅速に策定・実行するのは難しい面もある。各国企業がAI活用にどの程度取り組んでいるのか、投資や人材確保はどのように進めているのかも気になるところだ。
今後日本企業はAI戦略をどのように構築し、具体策にどう落とし込んでいくべきか。AI関連のM&Aやパートナーシップ構築はどう検討すべきか。世界的なアカウンティングファームであるEY(アーンスト・アンド・ヤング)が発表した調査レポートを基に、EYジャパンの梅村秀和氏が解説する。
生成AIはブームでなく、経営や事業を左右する重要課題
EY(アーンスト・アンド・ヤング)は2023年12月、独自の調査レポート「EY CEO Outlook Pulse survey」を発表した。グローバルで活躍する各国企業の計1200人のCEOを対象に四半期ごとに実施する、最新のM&A動向に関する調査である。今回は生成AI(人工知能)への関心が世界的に高まっていることを反映して、CEOのAI戦略や投資に関する調査結果が豊富に掲載され、大変興味深い内容となった。
同レポートが最初に指摘しているのは、AIに対する企業の関心の高さだ。2023年の年初以降、企業が決算関連資料において「AI」「生成AI」に言及している数は1年間で2倍以上も増加したという。また「競合他社に戦略的優位性を与えないよう、今すぐ生成AIに取り組む必要がある」と判断しているCEOは、全体の70%にのぼった。
さらに、「競争優位性を担保するために、生成AIに迫られる形で自社のビジネスモデルを創造的に破壊することになる」と予想するCEOも70%以上だったという。大半のCEOが、生成AIを単なる一過性の技術的なブームではなく、企業経営や事業展開に大きな影響を与える重要課題と捉えていることを示している。
また今回の調査では、生成AIを活用するための幅広い施策にすでに取り組んでいることも明らかになった。
下図に示したように、AI関連の取り組み状況を尋ねたところ、「経営幹部直属のAIタスクフォースを設置する」「AI特有のリスクを効果的に管理する方法を見極める」「必要なAIスキルを持つ人材を採用する」など8つの項目について、いずれも8割程度の企業が「実行中」または「実行完了」と答えている。各国CEOがかなり具体的な行動を起こしていることがわかる。