2025年2月までに全国展開を目指すセブン-イレブンのネットコンビニ「7NOW」

 30~40坪の売り場に、すぐに食べたり、飲んだり、使ったりできる便利な商品を品揃えし、24時間営業を続けてきた日本のコンビニ。この商売のやり方で成長を続け、特に東日本大震災以降、セブン-イレブンは過去最大の出店を続けていく。ただ、その一方で2010年代半ばに沖縄県を除く46都道府県に出店した後、新規店舗開発に陰りが見え始めてきたのも事実だ。今までと同様、既存の商売で成長を継続できるのか。そこで、セブン-イレブンが新たに模索し始めたのが“店舗の外”に打って出る新しい商売のやり方だった。今回はその事例を、歴史を踏まえて解説する。

シリーズ「日本のコンビニに変革の歴史を学ぼう」
(第1回 業態の変革)セブン-イレブンの最初の分岐点「2号店の否定」が後の成長をもたらした理由
(第2回 出店の変革)稚内市に異例の飛び地出店、“業界の常識外れ”を可能にしたローソンの手法
(第3回 立地の変革)店舗は小さいのにセブン-イレブンが売上日本一のチェーンになれたわけ
(第4回 商品開発の変革)コンビニコーヒーの「市場拡大理論」に成熟マーケットの攻略法を学ぶ
(第5回 商売の変革)宅配の否定から始まったコンビニが半世紀を経た今、宅配に取り組んでいる理由(本稿)


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 2024年5月、セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン-イレブン)は1号店の開設から半世紀を迎える。

 セブン-イレブンでは、この50年の間にさまざまなイノベーションがあった。1号店・豊洲店オーナーの山本憲司氏は、「印象深かった革新的な事例はたくさんありますが、強いてあげるなら、1976年の『共同配送』、2001年の『ATM設置』、2007年の『セブンプレミアムの販売スタート』かな」と答えている(セブン-イレブンのホームページ「オーナーインタビュー」、インタビュー時期は2019年前後と推定)。

 共同配送もATM設置も実質創業者の鈴木敏文氏が主導した取り組みであり、プライベートブランドのセブンプレミアムの販売開始にしても、イトーヨーカ堂やヨークベニマルなど事業会社にまたがって推進したわけだから、セブン&アイグループを率いた鈴木氏が力を発揮したものといえるだろう。

 その鈴木氏は2016年4月7日の会見で退任を表明したが、その際、自らに退任を迫ったセブン-イレブン井阪隆一社長(当時)に対して、新しい改革が見られなかったといった趣旨の発言を残している。

 しかし、その心配は杞憂に終わったといってよいだろう。井阪氏がグループのトップ(セブン&アイ・ホールディングス社長)になった後、2017年よりセブン-イレブンで革新的な実験が行われたからだ。

 その実験とは「実店舗を経営しながらネットコンビニも運営する」というもの。すなわち、1人の加盟店オーナーが実店舗で商売しながら店の商品を宅配するネットコンビニ(セブン-イレブンではネット2号店と呼ぶ)にも取り組み、より高い売上を目指そうという実験だ。

 これはそれまでのコンビニの商売のやり方を根本から変えるという点で、1号店出店からの50年の歴史で、最も革新的な事例と言っても過言ではないだろう。

 このネット2号店の実験は北海道地区から「セブン-イレブン ネットコンビニ」としてスタートし、2022年2月にサービス名称を「7NOW」(セブンナウ)に変更したもの。2023年8月段階で1都3県を中心に札幌、広島の約5000店舗に導入され、2024年2月末には1万2000店舗、2025年2月末までに全国の店舗で展開する計画である。

セブン-イレブンの商品を最短30分で届ける

 7NOWとは、セブン-イレブンの商品を最短30分で届けるサービスだ。

 配送は軽自動車や小回りの利く原付三輪スクーターを使用。配達業者は1車両につき5~7店舗を担当し、商品を配送する。配送は加盟店のオーナーや従業員ではなく、チェーン本部が委託した配送業者が担当する。注文は税別1000円以上を基本とし、配送料は1回110~550円と配送する地域や時間帯により幅を持たせている。