写真提供:共同通信社

 地方部を中心とした人口減少による地域課題が顕在化し、日本の産業競争力低下が叫ばれる。そうした中、デジタルの力で地方の社会課題を解決し、魅力を高める「デジタル田園都市国家構想」をはじめ、「スマートシティ」への取り組みが本格化している。本連載では、先進事例として注目を集める福島県会津若松市の取り組みを中心に、スマートシティの最前線と自立分散型社会の実現について解説した『Smart City 5.0 持続可能な共助型都市経営の姿』(海老原城一、中村彰二朗著/インプレス)より、内容の一部を抜粋・再編集。スマートシティを成功に導くための秘訣を探る。
 
 第2回目は、地方創生を先取りする会津若松市のスマートシティの取り組みについて解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 市場規模は10年間で5倍の予測、世界のスマートシティの新潮流とは?
■第2回 都市OSを実装してデータをフル活用、会津若松市のスマートシティ構想(本稿)
第3回 ベースは「三方良し」、共助型スマートシティ「会津モデル」の5つの特徴
第4回 主人公は市民、スマートシティ会津若松の「10の共通ルール」とは?

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

■「地方創生」を先取りしたスマートシティ会津若松

 スマートシティ会津若松の具体的なプロジェクトは、初めの数年はゆったりした歩みだった。

 2012年に「エネルギー見える化プロジェクト」を実施。2013年には行政が保有する情報を無償公開するオープンデータプラットフォーム「Data for Citizen(D4C)」を整備した。

 Data for Citizenは、後の「都市OS」の機能の一つに発展する。オープンデータからは、積雪で見えなくなった消火栓の位置を地図上に表示したり、除雪車の運行情報を知らせたりするスマートフォン用アプリケーションなど、さまざまなサービスが誕生している。

 2014年5月には、会津若松市の「ビッグデータ戦略活用のためのアナリティクス拠点集積事業」が、内閣官房の地域活性化モデルケースに採択された。これと軌を一にして、世間的には鳴りを潜めていたスマートシティが、新たな枠組みである「地方創生」のための施策として全国区で息を吹き返す。

 そのきっかけとなったのが、各界に衝撃を与えた通称『増田レポート』である。正式には民間の日本創成会議で人口減少問題検討分科会の座長を務めていた増田 寛也 氏が、『成長を続ける21世紀のために「ストップ少子化・地方元気戦略」』において「自治体の半数が消滅可能性都市になる」と警鐘を鳴らしたのだ。日本の課題認識が、「人口減少・高齢化」から「人口急減・超高齢化」へと一段シフトアップしたとも言える。

 これを受けて、同年7月の閣僚懇談会で安倍首相(当時)は、「個性あふれる地方の創生により、経済の好循環の波を全国に広げ、各地域で若者が元気に働き、子どもを育て、次世代へと豊かな暮らしをつないでいくため『まち・ひと・しごと創生本部』を立ち上げ、各省の縦割りを排除し、地方創生のための各省の企画立案機能を集中させる」旨の発言をしたと伝えられる。いわゆる「ローカル・アベノミクス」とも呼ばれるもので、「地方創生=まち・ひと・しごと創生」という青写真が示された。

 従来の地域活性化は、地方自治体の所管エリアである「まちづくり」に焦点が当てられていた。コミュニティの衰退にブレーキをかけるために中心市街地へ都市機能を集約するコンパクトシティ化や、待機児童解消のような児童福祉のカテゴリーに比重が置かれた少子化対策など、公的補助でマイナスを抑える対策である。

 一方の地方創生では、「まち」に経済の活力を取り戻すために欠かせない「ひと」と「しごと」が加えられている。それまでも人材育成や雇用創出はうたわれていた。しかし、工場や巨大ショッピングモールを呼び込むなど、一時的な雇用増加で終わってしまう例が少なくない。将来に渡って継続する仕組みにするためには、地域の中で「ひと」と「しごと」が循環する産業を生み出す必要がある。

 そうしたプラスの魅力が「まち」を包摂する形で作り出されるのがスマートシティである。企業の3大経営資源である「モノ・ヒト・カネ」になぞらえ、都市マネジメントの資源を「まち・ひと・しごと」と位置付けたとも考えられる。今では、情報を加えた4大経営資源が常識だとすれば、地方都市においても「まち・ひと・しごと」に加え、データの利活用が欠かせない。これらを早くから実践し、地方創生を先取りしていたのが会津若松のスマートシティなのだ。