リーダーやマネジャーに任命されると、その日から様々なミッションが課せられる。チームや部署の目標達成に、部下の育成、経営会議への参加。人の上に立つことになると、とにかく大変だ。近年は「個の時代」と言われ、「自分らしくありたい」「個として認められたい」という人も増えている。人を動かして成果を上げることの難易度が高まる中、悩みを抱えるリーダーも多いのではないだろうか。
こうした状況について『とにかく仕組み化―人の上に立ち続けるための思考法』(ダイヤモンド社)の著者で、識学 代表取締役社長である安藤広大氏は、「仕組み化を徹底することで、組織はうまく回るようになる」と提唱する。仕組み化することで得られるメリットとは何なのか、話を聞いた。
いま、社員に求められるのは「モチベーション」ではない
──最新著書で、組織において仕組み化を徹底することの大切さを唱えられています。「仕組み化」とは具体的にどういうことでしょうか。
安藤広大氏(以下敬称略) 本書で紹介している「仕組み化」とは、「ルールを決めて、組織をルールで回す」ことを意味します。ポイントは2点です。
一つ目は、「できない人」に合わせて社内の仕組みを作り、社員全員を生かせる状態をつくり出すこと。二つ目は、業務の属人化を解消して、「優秀な人が不在でも、チームとして機能することで勝てる組織」にすることです。この2点を押さえて、とにかく仕組み化することを薦める内容になっています。
──なぜ、いま仕組み化が必要なのでしょうか。
安藤 人を大切にする、社員を大切にするといった「日本らしさ」を履き違えている企業が多いからです。多くの人は組織の中で働きます。ですから、本当の意味で社員を大切にするならば、組織の中で貢献できる人材に育てることが重要であるはず。
しかしながら、多くの日本企業は一人ひとりに向き合いすぎて、人として優しくしすぎたり、それが甘えにつながったりして、組織で活躍できる人材をどんどん減らしていっている状況です。その結果、企業も社員一人ひとりも弱くなって、得られる果実(利益)が減ってしまっている。だからこそ、いまの時代に仕組み化が必要なのです。
──なぜ、多くの日本企業がそのような状態に陥っているのでしょうか。
安藤 ある時期から「モチベーション」という言葉が世の中を席巻するようになりました。マネジメントを行う上で、上司が部下のモチベーションをいかに高めるかが大事、と言われるようになったのです。
しかし、これはあくまでもアメリカの企業に適したマネジメント法です。アメリカではこのようなマネジメント法がとられる一方、成果を出せない人材は解雇できる法律があります。そもそも日本とは労働社会の仕組みが全く違うのです。日本では一度雇用すると簡単には解雇できないため、アメリカと同じマネジメント法を取り入れると、様々な無理が生じます。
──日本では成果を出せない人を辞めさせられないのに、自由を与えすぎたマネジメントをしているのが問題なのですね。
安藤 解雇規制が緩和されるようであれば、また違ったアプローチも出てくるでしょう。しかし、アメリカよりも労働者の権利が強い日本において、さらに労働者の権利を助長するようなことをしても、なかなかうまくはいきません。そんな状況だからこそ、きちんとルールを決め、それをしっかり守らせることで成果を上げる仕組みが必要なのです。