日本企業が今もなお「失われた30年」から抜け切れず低成長にあえぐ中、米国をはじめとする先進諸国の経済は着実に成長を続けている。日本がもう一度輝きを取り戻すために「今一度、外資の合理的なマネジメントから学ぶべき」と語るのは、45年にわたりマクドナルドやウォルト・ディズニー・ジャパンをはじめとする外資系企業の経営に携わってきたKUREYON代表取締役の中澤一雄氏だ。2024年9月に『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』(宝島社)を出版した同氏に、日本企業が低迷期を脱するためのポイントと、マクドナルドやディズニーから学ぶべき「外資流の経営手法」について聞いた。(前編/全2回)
日本企業の生産性を下げている「4つの悪しき慣習」
──著書『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』の冒頭では、日本企業の生産性の低さや従業員エンゲージメントの低さについて指摘しています。この背景にはどのような要因があると考えていますか。
中澤一雄氏(以下敬称略) 日本独特の「悪しき慣習」が要因として挙げられます。「新卒一括採用」「春・秋の定期人事異動」「年功序列」「定年制(役職定年)と終身雇用」の4つです。この4つを実施しているのは、世界を見渡しても日本だけです。
特に問題なのが「新卒一括採用」です。新卒で入社した従業員は多くの場合、入社数年間は十分な生産性を発揮できず、入社前に抱いていた期待とのギャップが生じがちです。結果として、新入社員の約30%が3年以内に辞めるといわれています。
米国の場合、3カ月間の夏期休暇を活用したインターン制度が一般的です。大学2年からの3年間で計3回のチャンスがあるため、そこで各社のカルチャーや仕事の進め方を把握し、実際に入社した際には即戦力として活躍することができます。そうした制度と比べると、日本の新卒一括採用はあまりにも効率が悪いと言わざるを得ません。
加えて、新卒一括採用を続けていると常に20~30%の余剰人員が発生することも課題です。また、高いパフォーマンスを発揮しても、それが報酬に反映されにくいため、評価の不公平感を生み、エンゲージメントと生産性を低下させてしまいます。結果として、企業全体の生産性も下がってしまうのです。
──「懸命に働いても手を抜いていても、どちらでも給与が変わらない」となれば、モチベーションは上がりませんね。