Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長 伊藤羊一 氏Zホールディングス Zアカデミア学長・武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長 伊藤羊一氏(撮影:内藤洋司)

 働き方が多様化する中、リーダーに求められる役割はどのように変化しているのだろうか。『「僕たちのチーム」のつくりかた メンバーの強みを活かしきるリーダーシップ』の著者であるZホールディングス Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一氏が語るのは「ダイバーシティ&インクルージョンなチームづくり」の重要性だ。次世代のリーダーに求められる能力や成果に繋がるチームの目標設定方法など、これからの時代に必要なリーダーシップの本質について同氏に聞いた。

「トップダウン型」ではなぜ、チームが機能しないのか?

――働くことへの価値観が変化している今、リーダーに求められる役割はどう変わっているのでしょうか。

伊藤 羊一 / Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長・武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部長

日本興業銀行、プラスを経て2015年4月よりヤフー。現在Zアカデミア学長として次世代リーダー開発を行うほか社外でもリーダー開発を行う。2021年4月武蔵野大学アントレプレナーシップ学部を開設、学部長就任。代表著作「1分で話せ」。

伊藤羊一氏(以下敬称略) 数十年前までは、モノを作れば作った分だけ売れる時代でした。本書では、この時代を「タテ(=ヒエラルキー)の社会」と表現しています。なぜなら、組織の中のコミュニケーションがトップダウン型で成り立っていたからです。品質を維持しながら大量生産・販売するためには、指揮・命令系統がはっきりしているヒエラルキー型組織の方が効率の良い時代でした。

 ところが、近年はインターネットが普及し、消費者の価値観も多様化しました。「これを作れば大量に売れる」とわかっていた時代と比べると、今は「正解のない時代」といえます。

 正解のない時代に、リーダーが一人、あるいは上層部だけで議論をしていても答えは導き出せません。だからこそ、立場に関係なくメンバー全員が意見を発言できるような、フラットな関係性のチームづくりが求められます。このような現代を「ヨコ(=フラット)の社会」と表現しています。

 リーダーと呼ばれる立場の人は、こうした変化に戸惑っている方も多いと思います。僕自身もそうですが、これまでに学んできたリーダー像や自身の成功体験とは異なる点があるからです。

 しかし、これからはフラットな関係性を構築できなければ、ビジネスも組織運営もうまくいきません。道徳的な観点から「ひとつの正解を押し付ける時代ではないよね」といわれる側面もありますが、それとは別にしても、フラットな関係性のチームづくりができなければ競争にも勝てないのです。