働き方が多様化する中、リーダーに求められる役割はどのように変化しているのだろうか。『「僕たちのチーム」のつくりかた メンバーの強みを活かしきるリーダーシップ』の著者であるZホールディングス Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一氏が語るのは「ダイバーシティ&インクルージョンなチームづくり」の重要性だ。次世代のリーダーに求められる能力や成果に繋がるチームの目標設定方法など、これからの時代に必要なリーダーシップの本質について同氏に聞いた。
「トップダウン型」ではなぜ、チームが機能しないのか?
――働くことへの価値観が変化している今、リーダーに求められる役割はどう変わっているのでしょうか。
伊藤羊一氏(以下敬称略) 数十年前までは、モノを作れば作った分だけ売れる時代でした。本書では、この時代を「タテ(=ヒエラルキー)の社会」と表現しています。なぜなら、組織の中のコミュニケーションがトップダウン型で成り立っていたからです。品質を維持しながら大量生産・販売するためには、指揮・命令系統がはっきりしているヒエラルキー型組織の方が効率の良い時代でした。
ところが、近年はインターネットが普及し、消費者の価値観も多様化しました。「これを作れば大量に売れる」とわかっていた時代と比べると、今は「正解のない時代」といえます。
正解のない時代に、リーダーが一人、あるいは上層部だけで議論をしていても答えは導き出せません。だからこそ、立場に関係なくメンバー全員が意見を発言できるような、フラットな関係性のチームづくりが求められます。このような現代を「ヨコ(=フラット)の社会」と表現しています。
リーダーと呼ばれる立場の人は、こうした変化に戸惑っている方も多いと思います。僕自身もそうですが、これまでに学んできたリーダー像や自身の成功体験とは異なる点があるからです。
しかし、これからはフラットな関係性を構築できなければ、ビジネスも組織運営もうまくいきません。道徳的な観点から「ひとつの正解を押し付ける時代ではないよね」といわれる側面もありますが、それとは別にしても、フラットな関係性のチームづくりができなければ競争にも勝てないのです。