■第1回 DXの成果獲得へ向けたチェンジマネジメントの重要性
■第2回 産業DXの動向を把握し、ビジネス変革を進める
■第3回 最新調査から見えてきた「デジタル技術活用の現在と未来」
■第4回 デジタルネイティブ・カンパニーを見据えた人材育成を進めよう
■第5回 旧来型の方法論と価値観は通用しない!VUCAの時代の経営パラダイムを知る
■第6回 組織、制度の悩みはこれで解決、「特区戦略」でDXの取り組みを加速させる
■第7回 推進できた企業に調査して分かった「DXプロジェクトの課題と4つの成功要因」
社内でのデジタルイノベーションを加速させるために、人材育成を重点課題と見なして、デジタル人材定義や育成計画の立案に取り組む企業は多い(企業変革を加速する実践的DX講座(4)「デジタルネイティブ・カンパニーを見据えた人材育成を進めよう」 参照)。
従業員のリテラシーの底上げに加えて、特定分野のスキルを備えるスペシャリストを育成する例も多く見られる。
しかし、人材の能力・スキルが向上すれば、自ずと社内でのデジタルイノベーションの取り組みが活発化するわけではない。いかに優秀な人材が育っても、本人にチャレンジする意欲があり、適切な動機付けがなされなければ、革新的なアイデアを俎上に載せるのは難しい。
また、プロジェクトが立案されても、それに見合ったスキルや技術が不足していれば円滑な推進は期待できない。さらには、プロジェクト予算の獲得に思わぬ時間を要し、時機を逃してしまうこともあるだろう。
こうした社内の環境要因によって推進が滞るような事態はぜひとも避けたいところであるが、企業においてイノベーションを促す制度や文化は必ずしも十分整備されているとはいえない。
下の図はITRが、IT戦略・デジタル革新に関わる管理職を対象に行ったDX成熟度調査から、イノベーションを促す環境に関する設問を一部抜き出したものである。それぞれの有無を調査したところ、「まさにあてはまる」と「ややあてはまる」と答えた企業はいずれも過半数に満たない結果となった。
中でも、「全社員のスキルや経験がデータとして一元化され、必要に応じて誰もが参照できる」の問いでは33%(「まさにあてはまる」「ややあてはまる」の合計、以下同様)と最も環境整備が進んでおらず、次いで「自分またはチームの判断で、創造的な活動を行うための予算権限が与えられている」は39%。そして、「挑戦する人材のモチベーションを向上させるための評価制度や報奨制度がある」は43%だった。
イノベーションを促す環境づくりには何が必要か?
デジタルイノベーションを促す環境とはどのようなものだろうか。それは、「デジタル人材が発案するビジネスアイデアをつぶさに捉え、迅速に企画・開発し、自由闊達に試行・実験できる環境」である。
その環境づくりに有効な施策をまとめたのが、次の図だ。調査結果で取り組み不足が分かった人材面、技術面、資金面の各々の観点から施策を紹介していこう。