DX戦略の必要性が叫ばれ、多くの企業が推進チームや専門部署を組成し、企業レベルでのデジタル変革を進めている。テクノロジの民主化やデジタルネイティブ層への世代交代が進み、近い将来にはデジタルは特別なものではなくなり、DXという言葉自体が過去のものになるだろうとの声すら聞かれる。

 しかし、DXが市場浸透する一方で、その成果を十分に享受している企業は決して多くないのが実情だ。ITRが国内企業を対象に実施した調査からDX実践度スコアを算出したところ、平均30.5点/100点満点との結果が得られた。これは、「複数のテーマでプロジェクトが行われているが、成果はまだほとんど出ていない」水準に該当する。DX推進で具体的な結果を出すことが、多くの企業の喫緊課題となっている。

DXプロジェクトの成功要因は何か?

 それでは、どのようにすればDXの成果を得られるのだろうか。DXプロジェクトの成功要因について2020年8月に調査したところ、1位が「経営者層のコミットメント(45%)」となり、「企業レベルでの組織変革/チェンジマネジメント(34%)」、「推進リーダー/チームの権限確保(31%)」、「IT/デジタル分野の技術者の参画(30%)」と続く結果となった。DXは、経営戦略であり、コーポレートワイドの取り組みである。ビジョンの策定や投資判断といった経営者が意思決定すべき領域も多い。経営幹部におけるDXへのコミットメントが重要な成功要因であることは間違いない。

 次いで重視される成功要因が、本稿でテーマとして取り上げる「チェンジマネジメント」である。チェンジマネジメントは1990年代まではよく聞かれるキーワードであったが、2000年に入ってからは研究・論文などを目にする機会は減っている。しかし、今なお多くのビジネススクールで講義対象となっており、欧米では既に一般的なマネジメント手法として定着しているとの見方もある。

 DXに限らず、従来のルールやプロセスを変える取り組みは、往々にして変化することへの抵抗を誘発し、社内外の反発を招くことにもつながる。伝統的ビジネスに依存する企業や官僚的/大規模な組織体制の企業においては、特にその傾向が強い。これらの企業が「チャレンジを奨励するカルチャー」、「イノベーション体質の組織」、「デジタルネイティブ人材」といったGAFA流の体制を備えるのが容易でないことは想像に難くない。

 DXは特定の事業やプロジェクトに閉じた取り組みではなく、全社的な組織変革の課題として認識する必要がある。このとき有効な手法が、企業カルチャーや従業員意識を含めて社内体制を理想的な状態へ移行させる組織変革、すなわちチェンジマネジメントである。