現在、DXを経営課題と捉える企業が増えており、組織構築やプロジェクト化に取り組む例は多く見られる。しかし、ほとんどの企業は自社のDX推進は決して順風満帆ではなく、乗り越えなければならない課題を抱えている。中でもデジタル人材の不足は多く企業で慢性的な課題となっており、計画的な人材育成が期待されている。
2022年にITRが行った『デジタル&メタバース調査』で、DXプロジェクトを進める上での課題を尋ねたところ、「エンジニアやスキルの不足」が最多(58%)で、次いで「社内制度や組織の壁により推進しにくい」(35%)、「セキュリティの懸念」(29%)、「意思決定や社内承認の遅さ」(28%)。人材・スキルの獲得は、突出して重要な課題といえるようだ。事実、社内資格制度や教育・研修プログラムを通じた人材育成、あるいは外部からの人材調達を進める企業は少なくない。より具体的で実践的な場として共創ラボを設けたり、従業員のモチベーション向上を促すために表彰制度やピアボーナスを採用したりする例もある。
物心がつくころには当たり前のようにスマートデバイスやデジタルコンテンツを利用してきた世代をデジタルネイティブ世代(あるいはZ世代)というが、日本の人口ピラミッドは変遷し、2030年には、こうしたデジタルネイティブ世代が企業の実務の中核を占めることになる。そのころには、あらゆるビジネス活動に「デジタル」が組み込まれ、デジタルを前提に発想し、議論し、決定し、遂行することが当然の世界となるだろう。DXはその変化を先取りしてアドバンテージを得るための取り組みでもある。
そうした中、デジタルネイティブ・カンパニーを見据えて人材を育成し、イノベーションを加速させたいが、その一方で「そもそもデジタル人材とは何か」「具体的にどのようなスキルや技術を備える人材が必要か」といった点に明確な解を見いだせず、二の足を踏む企業も少なくない。
そこで今回は、デジタル人材が備えるべきスキルや技術の整理を試みた。下の図に示す「デジタル人材マップ」では、求められる人材をレイヤーとタイプで区分し、主要な資格や技術の名称を例示している。人材像を構想化したり、育成計画を検討したりする上で参考にしていただきたい。