さまざまなデジタル技術の開発が進み、ビジネスへの適用・活用が見られる中、企業におけるテクノロジーへの関心度は一段と高まってきている。本稿では、最新の調査結果をもとに、DX推進企業におけるデジタル技術活用の現状と将来動向を概観する。

技術動向の捕捉、自社ビジネスへの適合性評価が欠かせない理由

 これまでも企業はさまざまな技術を取り入れて事業を営んできたが、今日、DXの文脈で語られるデジタル技術は、業務高度化やビジネスモデル変革を導く先進的なテクノロジーやスキルである。これらの技術は必ずしも十分に成熟しておらず、また社会に定着しているわけでもない。とりわけ昨今は、技術動向の趨勢を予測することが難しく、市場普及した技術が破壊的イノベーションにより瞬く間に失速するということが起こり得る。

 一方、技術ブレークスルーにより、再評価されて急速に社会に浸透するケースもある。現在、あらゆる業務や場面で活用され、一般社会に浸透している「AI」は、過去に2度ムーブメントが失墜したことはよく知られる。第3世代となる今日のAIの躍進は、機械学習とニューラルネットワークによるディープラーニングにより認識や推定の精度が高まり実用的となったことが普及の背景にある。

 このように技術革新の先行きを見通しにくい現代は、常に技術動向を捕捉し、自社ビジネスへの適合性を評価することが欠かせない。DXは、業務高度化やビジネスモデル変革を通じて競争優位を産み出すことが目的である。それには、デジタル技術/データを、他社に先駆けて試行・実験することで早期に活用フェーズに乗せることが重要だ。

 先行者利益を上げることで、同市場での優位なポジションを築くことができる。さらに、それが専門性や独自性の高いものであれば、知財マネジメントやライセンシング管理などの手法を駆使して、参入障壁を築くことも後々の有効な戦術となろう。

 こうした背景から、本稿ではデジタル技術の活用動向を取り上げる。ITRが2022年8月に実施した調査から、DX推進企業における現在と今後の技術利用状況を見てみよう(図1)。必ずしも明確な区分ではないが(例えば、IoTの目的はデータ活用にとどまらないが、便宜上データ領域に含めた)、ここでは大きくデータ領域、通信・エッジ領域、仮想空間領域、Web3領域の4つに技術分野を整理した。